カーボンニュートラル実現には、再生可能エネルギーによる自家発電自家消費が重要となってきます。現在日本では、再エネのツールとして太陽光発電設備と蓄電池が使用されています。太陽光発電設備と蓄電池は10年以上運用するものであり、自然災害などメーカー保証では補えない破損や賠償が発生した場合、自分ひとりでは回収できないほどの損失になる可能性があります。そうならないための対策として保険に加入しましょう。
蓄電池が加入できる保険には何があるのでしょうか。今回はカーボンニュートラルの取り組みとして、電力供給における再生エネルギーの割合を増やすためのツールである太陽光発電設備と併設すると、自家発電自家消費をさらにスピードアップさせる蓄電池に対応した保険について解説します。
2050年を目標としたカーボンニュートラルへの取り組み
2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロに削減するカーボンニュートラルへの取り組み例は以下のとおりです。
2030年には電力供給における再生可能エネルギーの割合を40~50%にする
1つ目は「2030年には電力供給における再生可能エネルギーの割合を40~50%にする目標を掲げている」ことです。
世界の多くの国や地域では、2030年には電力供給における再生可能エネルギーの割合を40~50%にする目標を掲げています。自然エネルギー財団によると、2021年度発電電力量の合計値は以下のとおりです。
- 世界47カ国:28,466TWh(再生可能エネルギーの割合27.9%、太陽光発電は3.6%)
- 日本:978TWh(再生可能エネルギーの割合22%、太陽光発電は9%)
- 中国:8,111TWh(再生可能エネルギーの割合29%、太陽光発電は4%)
- インド:1,625TWh(再生可能エネルギーの割合21%、太陽光発電は4.1%)
- アメリカ:4,208TWh(再生可能エネルギーの割合21%、太陽光発電は3.6%)
- 欧州:3,677TWhTWh(再生可能エネルギーの割合42.3%、太陽光発電は5.2%)
(https://www.renewable-ei.org/statistics/international/)
事業を再生可能エネルギー電力で賄う企業数が年々増えている
2つ目は「事業を再生可能エネルギー電力で賄う企業数が年々増えている」ことです。
事業を100%再エネ電力で賄うことを目標とする企業連合である「RE100」の参加企業数は世界的に年々増えており、環境省によると2022年3月17日時点で、24カ国から356社もの企業が参加しています。日本はアメリカ(93社)に次ぐRE100加盟国数世界第2位の国であり、66社が参加しています。
(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/RE100_joukyou.pdf)
再エネの割合を増やすのに役立つのは太陽光発電設備と蓄電池
太陽光発電を電力供給として利用する場合、太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの太陽光発電設備を設置し、太陽光を取り込んで電力へと変換します。
また、蓄電池を併設すれば作り出した電力を貯めることができ、日中に太陽光発電を家庭内や工場などで使用し、太陽が沈むと蓄電池に貯めた電力を使うことができます。蓄電池からの電力が足りなくなっても、夜間は安くなる電気料金で電力会社から電力を購入し使用します。そうすることで、節電・節約が可能な自家発電自家消費が可能となり、電力供給における再生可能エネルギーの割合を増やすことができます。
際限なく損失が発生するリスクに備え保険に加入
一般的に太陽光発電設備と蓄電池は外へ設置されるため、自然災害などによる太陽光パネルの破損やひび割れが発生する可能性が高くなります。
そのため、設備の補修費以外に近隣被害に対する賠償金など際限なく損失が発生するリスクに備え、火災保険などの保険に加入しておく必要があります。保険に加入する際に重要なポイントは3つです。
加入するメリットと加入しないリスクを把握する
1つ目は「加入するメリットと加入しないリスクを把握する」ことです。
- メリット:毎月の保険料などランニングコストが増加するが、投資額を取り返せないまま再起不能になるほどの大損失を抱えて撤退を余儀なくされる可能性を回避できる
- リスク:メーカー保証に適応されない損害が発生した際、設備の補修費用や廃棄費用だけでなく、近隣住宅への損害賠償など際限なく損失が発生して取り返しがつかない
保険料に対してシビアな判断基準を持つ
2つ目は「保険料に対してシビアな判断基準を持つ」ことです。
太陽光発電設備や蓄電池は長く運用するため、適正価格より高額なコストを負担しないよう、保険料に対してシビアな判断基準を持つことが重要となります。保険会社を選ぶ際は一つだけではなく、複数の会社に見積もりを申込み、より良いところを判断しましょう。
概要と価格だけはなく補償範囲の詳細まで入念にチェックする
3つ目は「概要と価格だけはなく補償範囲の詳細まで入念にチェックする」ことです。
大体の保険は補償範囲が保険会社によって異なるため、かけた費用に対して効果を得られないといった状態になる可能性があります。そうならないように、概要と価格だけはなく補償範囲の詳細まで入念にチェックしましょう。
太陽光発電設備において加入できる保険
太陽光発電設備において加入できる保険は大きく4つに分類されます。
- 火災保険:火災、風災、雪災などによって建物や家財などの損害補償に加え、水災による損害補償を付帯できる保険
- 動産総合保険:事業用の什器・備品、機械、器具、商品または個人所有のカメラ、楽器などの動産を対象とした、条件に適した偶然事故による損害を補償してくれる総合保険
- 賠償責任保険:運営する太陽光発電所が他者に損害を与えたときに補償を受けられる保険
- 休業補償保険:自然災害などによるトラブルや出力制御によって稼働停止した売電収入の損失を補償する保険
太陽光発電設備において加入できる保険について、下記のリンクにて詳しく解説しています。併せてお読みください。
蓄電池を対象とした保険「動産総合保険」
住宅用蓄電池を対象とした保険は「動産総合保険」です。
動産総合保険金額の限度は損害保険金とあわせた金額です。損害保険金とは、損害の額(再調達価額)から他の保険契約などから支払われた保険金または共済金の合計額を引いたものです。
以下のような事故が発生した場合、損害発生および拡大防止のために支出に必要な費用、または有益な費用を受け取ることができます。
- 火災、落雷、破裂または爆発
- 自然災害による水災、風災、雹災、雪災(洪水・高潮・土砂崩れ・豪雪・雪崩など)
- 外部からの物体の落下・飛来・衝突(運送中の事故、車の飛び込み、飛行機の墜落など)
- 外来の事故に直接起因しない保険対象の電気的事故または機械的事故など
偶然の事故による損失など、上記以外の事故で保険金は支払われません。下記は保険金が支払われない条件の一部となります。
- 保険契約者、被保険者と同居の親族、被保険者または保険金受取人の故意もしくは重大な過失または法令違反によって生じた損害
- 雨漏りなどによる損害
- 地震もしくは噴火またはこれらによる津波によって生じた損害
- メーカー保証の対象となる損害など
動産総合保険は地震に対する保険が備わっていないことが多く、付与したい場合は特約に別途加入する必要があります。なので、保険の加入を検討する前に詳しく補償範囲を確認するように意識しましょう。
大容量の移動型蓄電池・ポータブル電源の場合
大容量の移動型蓄電池・ポータブル電源は外で使用することが多いため、メーカー保証の適応がない事故などに対して動産総合保険に加入していれば安心です。
しかし、大容量の移動型蓄電池・ポータブル電源の動産総合保険に入る方が非常に少なく、動産総合保険を取り扱う保険会社によっては使用方法や保管場所などを事細かに聞き取りされる場合があり、以下のような問題が発生します。
- 同じ蓄電池であっても保険会社によって条件や見積金額に大きな差がでる
- 蓄電池として正しい用途で使用すれば、事業用だけでなく私用での取り扱いも保険金額の支払い対象になるケースもある
- 特約条項で「移動中」や「レンタル」は不担保とされる可能性もある
そのため、大容量の移動型蓄電池・ポータブル電源の場合、保険会社選びは慎重に行いましょう。
再利用蓄電池の開発と中古蓄電池の性能を評価した保険を提供
2022年6月6日、MS&ADインシュアランスグループのあいおいニッセイ同和損害保険株式会社とNExT-e Solutions株式会社は、蓄電池のリユース市場創出に向けた協業を発表しました。
蓄電池の長寿命化や複数用途での利活用を実現する独自の技術・ノウハウを保有するNExT-e Solutions株式会社と協業することで、安全かつ高性能な再利用蓄電池の開発と中古蓄電池の性能を評価した保険を提供することで、需要家に購入を促します。
この協業は、評価が難しいために低迷している蓄電池の再利用市場創出・拡大と活用促進による循環型社会の実現が目的です。
2023年度にあいおいニッセイ同和損害保険は電気自動車(EV)やビルの停電対策用の蓄電池などを対象とした蓄電池向けの保険を売り出す予定です。
蓄電池の廃棄やリリースについて下記のリンクにて詳しく解説していますので併せてお読みください。
まとめ
太陽光発電設備と併設すると自家発電自家消費をさらにスピードアップさせる蓄電池に対応した保険について解説してきました。以下まとめになります。
- 蓄電池で加入できる保険は「動産総合保険」
- ポータブル蓄電池を対象として動産総合保険へ加入する人が少ないため、同じ蓄電池であっても保険会社によって条件や見積金額に大きな差がでるので、慎重に保険会社を選ぶ
- あいおいニッセイ同和損害保険は2023年にも蓄電池向けの保険を売り出す予定
蓄電池は10年以上運用するため、保険料は問題が起こってから後悔しないために必要な投資であり、再生可能エネルギーの電力供給割合増加に貢献しているといえるでしょう。年間数千円や数万円の負担はリスク回避を考えれば決して高くはありません。加入する保険会社は保険料が少しでも安くなるよう複数社へ相見積もりや補償範囲を詳細までチェックするなど、後悔しないようにしっかりと吟味することをオススメします。蓄電池導入の際は、ぜひ保険に加入を検討してみてはいかがでしょうか。