蓄電池とDER補助金

【2022年】蓄電池の電力需給バランス調整を応援するDER補助金!太陽光発電利用の勢いを推進する

各家庭や商業施設の太陽電池で発電した電気や電力会社からの電気を蓄電池へ蓄電し、必要な時に計測装置を経由して外部で遠隔操作し、放電する仕組みをDERといいます。

地球温暖化対策として太陽光発電システム利用の勢いを持続化させつつ、さらに推し進めるため、国は2021年度からDER補助金制度を開始しました。最近追加公募された2022年度DER補助金はどのような内容になっているのでしょうか。今回は蓄電池と2022年度DER補助金について解説します。

DERとは

DER(Distributed Energy Resources:分散型エネルギーリソース)とは、社会全体の電力供給を発電所からの電力に依存するのではなく、各家庭や商業施設に太陽光発電システムや蓄電池などを設置し、小規模な電力供給システムを生み出す次世代型エネルギーシステムです。太陽電池で発電した電気や電力会社からの電気を蓄電池へ蓄電し、必要な時に計測装置を経由して外部で遠隔操作し、放電する仕組みになっています。

DERは、電力需要の増加が今後も見込まれることに対して以下のことを目的としています。

  • 社会全体の電力供給の安定化
  • 電力コストの低減
  • エネルギーの補完など

蓄電池は、電気の需要と供給のバランスを調整するために使用されます。経済産業省は分散型エネルギーリソースを活用した エネルギーシステムの普及拡大に向けた取組として3E+Sを掲げています。

  • Safety:安全性が大前提
  • Energy Security:震災前は約20%だったエネルギー自給率をおおむね25%程度にする
  • Economic Efficiency:2030年度には電力コストを9.5兆円まで引き下げる
  • Environment:温室効果ガス排出量を2030年度までに2013年度比26%削減を実現する

出典:経済産業省「分散型エネルギーリソースを活用した エネルギーシステムの普及拡大に向けた取組」
(https://www.chugoku.meti.go.jp/latestnews/pdf/enetai/191028_1.pdf)

DER補助金とは

IoTやAIの発展により、電力需給の予測やモニターによる発電量可視化が可能になったことで、一般家庭での太陽光発電システムによる自家発電自家消費へのハードルは下がりつつあり、テクノロジーの進化によってエネルギー利用の最適化が実現されています。

地球温暖化対策として太陽光発電システム利用の勢いを持続化させつつ、さらに推し進めるため、国は2021年度から太陽光発電の事業に取り組む事業者や家庭を支援する「DER補助金」(分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業)を開始しました。補助金は経済産業省が管轄し、一般社団法人「環境共創イニシアチブ(Sii)」より交付されます。DER補助金の目的は以下のとおりです。

  • DER事業の調査・分析を通じたアグリゲーション関連ビジネスの発展
  • カーボンニュートラルの達成

アグリゲーションとは、電気の需給バランスを束ねる中間事業のことであり、主な仕事内容は余剰電力の売却・還元(ネガワット取引)、ピーク時の電力需要制限、新たな電力需要の創出などです。

補助金をもらうためには実証へ協力が必要

DER補助金は実証事業となっているため、補助金をもらうためには実証に協力しなければいけません。DER補助金の概要は以下のとおりです。

  • 国はDER事業者に補助金を出すことで実証実験への協力を促す
  • 事業者は補助金を受けることで蓄電池をリーズナブルに導入できる
  • 全体の実施期間3年間の内、実際に通常の運転モードを無視され強制的に蓄電池の充電・放電を遠隔操作されるのは「1年間に1週間程度」(つまり、3年で3週間程度)
  • DER補助金が交付されるのは実証後

DERの実証事業が成功すれば、電気を多く使うピーク時用の電力を供給するために発電所を動かすことなく、各家庭や商業施設などの太陽光発電や蓄電池からの電気を使うことができるでしょう。近い将来、電力需給バランスが整えば、地域間で電気の貸し借りや融通をし合えるようになるかもしれません。

電気を自由にコントロールできる未来を実現させるために、日本は補助金制度を利用しながら実証事業を重ねつつ、検証を進めている段階です。

2022年度DER補助金の概要

2022年度DER補助金(令和4年度 分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業)の概要は以下のとおりです。

DER補助金がもらえる条件

1つ目は「DER補助金がもらえる条件」です。

DER補助金の対象となる実証事業は以下のとおりです。

  • 基盤整備事業(A事業)
  • DERアグリゲーション実証事業(B事業)
  • DER等導入事業(C事業)

家庭用蓄電池向けの補助金制度はC事業に該当します。家庭用蓄電池向けの補助金制度以外のC事業対象は以下のとおりです。

  • V2H充放電設備
  • 燃料電池(エネファーム)
  • IoT関連機器など

家庭用蓄電池向けの補助金制度の助成対象は以下のとおりです。

  • すでに太陽光発電システム設置済みであり、これから蓄電池を導入する
  • これから太陽光発電システムと蓄電池の両方を導入する
  • すでに家庭内に太陽光発電システム・蓄電池・HEMS(家庭内の電気製品を管理するシステム)のすべてを設置済み、またはこれから設置する
  • 蓄電池を新規導入し、電力を管理・制御する事業者(アグリゲーター)と連携して実証実験に協力する
  • 対象となる蓄電池はSII(環境共創イニシアチブ)に事前に登録された蓄電池
  • 家庭用蓄電システム目標価格15.5万円/kWh(蓄電池購入額+工事費・据付費の合計)以下のコストで行う工事しか対象にならない

合計費用はメーカーや販売店によってばらつきがあるので、目標価格を上回る可能性があります。そのため、DER補助金を検討する際は必ず蓄電池導入費用を下調べをしましょう。

 DER補助金額

2つ目は「DER補助金額」です。

補助金は予算がなくなった時点で受付終了になるため、早めに申し込みを行いましょう。2021年度のDER補助額は申込開始から2~3ヵ月くらいで補助金予算がなくなりました。

2022年度のDER補助額は、予算が少なかったこともあり、6月1日から受付を開始してたったの2日間で予算満額となってしまい早くも公募打ち切りとなりました。この事態を重く受け止め、以下の項目が追加されました。

  • 予算追加:13.5億円
  • 公募受付期間:2022年7月5日~2022年8月31日まで

一次公募時に予算満額で不受理となってしまった方も再度申請が必要です。申請受付は新着順なので、早めに動きましょう。

2022年度DER補助金額は以下のとおりです。

DVR補助金予算341,000万円
蓄電池販売の上限金額蓄電池商品・工事代の総額が15.5万円/kWh以内

 

設備区分 費用区分補助率補助金上限額
蓄電池家庭用蓄電池設備費・工事費1/3以内初期実効容量(kWh)×3.7万円
TPOモデル初期実効容量(kWh×5.2万円
V2H充放電設備 設備費1/2以内75万円/
 工事費定額40万円/
家庭用燃料電池

(エネファーム)

 設備費・工事費4万円/
HEMS

(モニター)

蓄電池新規設置に併せて導入設備費・工事費定額5万円/申請
蓄電池設置済みで後から導入10万円/申請

 初期実効容量とは、蓄電池で実際に使用できる電力容量のことです。どの蓄電池でも充放電されない予備があるので、実効容量は表記されている電力容量よりも1割~2割少なくなります。

TPOモデル(第三者所有モデル)とは、アメリカで主流のビジネスモデルであり、事業者が保有する太陽光発電システムや蓄電池を、顧客の住宅や事業所に設置して収益を上げることです。

蓄電池の補助金額計算例

スマートPVプラス7.04kWh蓄電池の場合、補助金額は279,400円の補助金がもらえる計算になります。

  • 初期実効容量:6.2kWh
  • 蓄電池の補助金:229,400円(6.2kWh×37,000円)
  • HEMS(モニター)の補助金:50,000円
  • 合計:279,400円(229,400円+50,000円)

申請から補助金受け取りまでのスケジュール

3つ目は「申請から補助金受け取りまでのスケジュール」です。

申請期間202261日(水)またはB事業者採択決定後~20221223日(金) 1200 必着

(※令和4年度の申請はB事業者からの代行申請になる)

交付決定交付申請から約1週間~3週間後(家庭用)
報告書提出期限事業完了後30日以内または、202329()のいずれか早い期日
蓄電システムの連携期限20221224()までに蓄電池を含むシステムの連携開始、実証実験への協力、報告書の提出を完了させる
実証事業期間20231月下旬頃から2024年までの3年間程度を予定(全てに参加する義務がある。実際の事業期間は1週間程度)
補助金支払期限2023331()

 「連携」とは蓄電池を含むシステム全体の工事が完了して、なおかつ電力会社との認定および連携運転が完了している状態を指します。そのため、工事期間や電力会社への申請期間から逆算して補助金申請を行う必要があります。工事は数日~1週間程度で完了する工事がほとんどですが、電力会社への設備認定の申請なども考慮し、数か月の余裕はみた方が良いでしょう。

また、工事業者との契約はこの補助金の申請を行って交付決定を受けてからでないとできません。工事の請負契約日と、補助金の交付決定日が逆転しないようご注意ください。

申請に必要な手続き・必要書類

4つ目は「申請に必要な手続き・必要書類」です。

家庭用蓄電池の補助金申請に必要な以下の情報や書類の申請は、全て電子申請システムのみとなっており、書類の郵送は不要です。

  • 交付申請書
  • 補助事業に要する経費、補助対象経費及び補助金の配分額
  • 暴力団排除に関する制約事項
  • 補助事業申請同意書
  • 身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
  • 見積書

また、必要に応じて提出する書類は以下の通りです。

  • 実施体制図(税込100万円以上の契約がある場合のみ)
  • 設備設置承諾書(設置場所の所有者以外が申請する場合はオーナーの承諾書が必要)
  • リース内訳書(リースの場合のみ)
  • ESCO契約書(ESCOの場合のみ)
  • TPO契約書サービス契約書(TPOモデルの場合のみ)

実証実験の参加に関して

5つ目は「実証実験の参加に関して」です。

DER構築実証事業に参加すると、自宅の蓄電池をアグリゲーターが遠隔で以下のように充放電操作します。

  • 電力需要が多い時間帯に、蓄電池を放電
  • 電力需要が少ない時間帯に、蓄電池を充電

実証実験の参加期間における注意点は以下のとおりです。

  • 24時間インターネットにHEMSを接続必須で
  • 期間中、蓄電池の設定変更は禁止

実証実験に参加するメリットとデメリットは以下のとおりです。

  • メリット:実証期間は1年間に1週間程度で、損失に比べると補助金額の方が圧倒的に高額であり、実証事業に参加する経済メリットが非常に大きい
  • デメリット:意図しないタイミングで蓄電池の充放電が行われるので、経済的な損失が発生する可能性がある

DER補助金を活用するときの注意点

2022年度DER補助金を活用するときの注意点は以下のとおりです。

DER実証実験中は蓄電池やV2Hなどを売却・処分はできない

1つ目は「DER実証実験中は蓄電池やV2Hなどを売却・処分はできない」ことです。

DER補助金を受け取った方は、DER実証実験に参加する義務が発生します。そのため、DER実証実験期間中に蓄電池を売却したり、処分したりするとDER補助金の返還を求められます。

DER実証実験は2024年までを予定しているので、DER補助金で蓄電池を購入する方は、それまでに売却や処分をする可能性がないかよく検討しておきましょう。

DER補助金は地方自治体の補助金制度と併用可能

2つ目は「DER補助金は地方自治体の補助金制度と併用可能」なことです。

補助金は、1つの工事に対して国(各省庁)が管轄している補助金同士の併用はできません。

たとえば、DER補助金(経済産業省)はZEH補助金(環境省・経産省)との併用はできません。同様に、都道府県が管轄している補助金と併用することもNGです。

しかし、国と地方自治体(都道府県・市町村)の補助金は併用ができます。DER実証事業で補助金が受けられるメーカーの蓄電池であれば、併用利用すれば高額な蓄電池もお得に購入できます。

ただし、地方自治体の補助金はその地方に住んでいる方が対象であり、予算が少ない傾向があります。自治体によって条件も異なり複雑なので、わからなければ窓口や専門家に相談しましょう。

まとめ

蓄電池と2022年度DER補助金について解説してきました。以下まとめになります。

  • DER補助金とは、国が2021年から開始した太陽光発電事業に取り組む事業者や家庭を支援する補助金制度
  • 蓄電池のDER補助金上限額は、家庭用蓄電池の商品代・工事代の総額が15.5万円/kWh以内で、初期実効容量(kWh)×3.7万円
  • 追加公募により2022年7月5日~2022年8月31日まで申込受付になっているが、先着順なのでできる限り早く動く

DER補助金は地方自治体の補助金制度と併用可能なので、東京都など、自治体の補助金が手厚い地域は、蓄電池設置の工事費用をかなり抑えて設置できるので、気になる方はぜひ一度自分が住んでいる自治体のHPを覗いてみましょう。ぜひこの機会にDER補助金を利用して、蓄電池導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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蓄電池コンシェルジュ代表
根上 幸久

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