地震などの大型災害による停電が発生した時や太陽光発電と連携して自家発電自家消費する時、蓄電池は非常に役立ちます。蓄電池は一般家庭にも設置されるようになり、私達の生活に浸透しつつあります。しかし、蓄電池について簡単にわかりやすく説明してほしいと言われた場合、困ってしまう人は多いのではないでしょうか。今回は蓄電池をわかりやすい説明で解説していきます。
蓄電池とは
蓄電池とは、充電を行うことにより繰り返し使用することが出来る電池です。
わかりやすく言うと大型の充電器(バッテリー)です。
電気を貯めて(充電)おき、貯めた電気を使う(放電)ことができます。
そのため、停電時や災害で電気の供給が止まってしまった場合、蓄電池に貯めておいた太陽光発電設備で作り出した電気や電力会社から買った電気を使用することが可能となります。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候によって電気を作り出す力が左右されます。なので、電力系統としてたくさん選ばれた場合電力系統に大きな負荷をかけることになります。
それに対し、再生可能エネルギーの出力平準化利用のため、メガソーラー発電所に蓄電池を併設するなどの取り組みを行っています。
蓄電池の機種
蓄電池の機種は以下の通りです。
- 全負荷型:家を丸ごと包み込むように家全体で電気が使える
- 特定負荷型:停電時に電気を使う部屋を設定し、その部屋でしか家電が使えない
蓄電池の仕組み
蓄電池の充放電は、以下の化学反応によって生まれる電子エネルギーを利用して行われます。
- 電解液に溶けやすい金属が内臓されたマイナス極
- 電解質に溶けにくい金属が内臓されたプラス極
- 電解液
乾電池も同じ仕組みですが、放電し続けるとマイナス極が電解液に溶けてなくなってしまい、交換しなくてはいけなくなります。しかし、蓄電池は乾電池と使用素材が違うので充電すれば再利用ができます。
蓄電池の放電の仕組み
放電の仕組みは以下の通りです。
- 電解液へマイナス極に内蔵された金属が溶ける
- 電子が発生
- 発生した電子がプラス極に流れ込む
- 電気が発生
蓄電池の充電の仕組み
充電の仕組みは以下の通りです。
- 電解液へプラス極の金属が溶ける
- 電子発生
- 発生した電子がマイナス極へと流れ込み固体化し金属に戻る
- 元の状態になる
蓄電池の分別
多種多様なスペックを持った蓄電池は使用環境や目的に合わせて選ぶことができます。容量やサイズ、用途に応じて大きく「家庭用蓄電池」と「産業用蓄電池」に分けられます。
家庭用蓄電池
家庭用蓄電池の特徴は以下の通りです。
- 容量は1kWhから15kWhまで、近年大容量化がすすんでいる
- 寿命、サイクル数は一般的に3,500回程度で10年
- 価格は工事費込みで100〜200万
- 室外機ぐらいのサイズ
- 太陽光発電など、発電設備と連携できる
- 年によって国や自治体による補助金がある
産業用蓄電池
産業用蓄電池の特徴は以下の通りです。
- 容量は20kWhなど大容量のものが多い
- 8,000サイクル数を超える高性能タイプもある
- サイクル数に比例して寿命が長い
- 数百万から1,000万を超えるなど高価格
- 中小企業経営強化税制など税制優遇が受けられる
蓄電設備のタイプ
蓄電設備のタイプは以下の通りです。
単機能型蓄電池
1つ目は「単機能型蓄電池」です。
単機能型蓄電池は蓄電池とパワーコンディショナー(パワコン)のセット設備です。
通常、太陽光発電で作られた電気は直流電流となります。これを家庭で使える電気にするにはパワコンによって交流電流に変換しなければいけません。
また、蓄電池も直流なので、蓄電池に電気を貯めたい場合パワコンによって直流へと変換させる必要があり、変換ロスが発生します。
- 太陽光発電設備(直流)→太陽光発電設備パワコン(交流変換)→各家電へ(交流)
- 太陽光発電設備(直流)→太陽光発電設備パワコン(交流変換)→蓄電池パワコン(直流変換)→蓄電池(直流)
- 蓄電池(直流)→蓄電池パワコン(直流変換)→各家電へ(交流)
ハイブリッド型蓄電池
2つ目は「ハイブリッド型蓄電池」です。
太陽光発電用と蓄電池用、両方のパワコンが一体になったタイプの蓄電池です。
パワコンが一体型になっているので1台で済ますことができ、太陽光発電の電気を変換することなく、蓄電池へ電気を貯めることができます。
10年経つとパワコンは故障する可能性が高くなるので、これを機に太陽光発電と蓄電池を両方設置しようと考えている人におすすめといえるでしょう。
トライブリッド型蓄電池
3つ目は「トライブリッド型蓄電池」です。
太陽光発電用と蓄電用、さらにEV(電気自動車)用のパワコンが一体化したタイプの蓄電池です。値段は高くなりますが、これから太陽光発電設備を設置しようと考えている方は、EVも利用できるので大変お得といえるでしょう。
スタンドアローン型蓄電池
4つ目は「スタンドアローン型蓄電池」です。
主にコンセントから電気を貯めるタイプの蓄電池です。
容量が小さく、太陽光発電と連携はできません。そのため、電気代削減ではなくBCP対策などで使用するのがいいでしょう。
蓄電池の種類
蓄電池にはたくさんの種類があります。その代表的なものを紹介します。
鉛蓄電池
1つ目が「鉛蓄電池」です。
- 1859年、フランスで開発された
- 開発から150年以上経った現代でも多く使用され、最古の歴史を持つ蓄電池
- 使い方によっては充電性能が劣化してしまい寿命が大幅に低下
- 鉛の原価が安いため容量あたりの電力単価が安く、たくさんの電流を放電可能
- 主な用途は電動車両用バッテリー(ゴルフカートや高所作業車など)やキャンプカーやレジャー用船舶のバッテリー
ニッケル水素電池
2つ目が「ニッケル水素電池」です。
充電式乾電池タイプの蓄電池
- 家電量販店や携帯ショップなど、幅広く販売されている
- 開発理由は、主流だった「ニカド電池」に使われているカドミウムに有毒性発見
- ニッケル水素電池の電極に使われていて、環境や人体に影響がないため安全性が高い
- 容量もニカド電池よりも約2.5倍あるため、ニカド電池の市場を大きく上回っている
- カメラなどに使用する乾電池の後発電池として主流となっていき、現在私たちの生活に広く浸透している
リチウムイオン電池
3つ目が「リチウムイオン電池」です。
- ノートパソコンやスマートフォンなどの充電池として私達の生活に最も身近な蓄電池
- 小型で大容量、長寿命
- サイズの大型化に成功後、電気自動車のバッテリーや家庭用蓄電池としても利用
- 技術開発がすすめられ、今後もさらに活躍を期待できる
NAS電池
4つ目が「NAS電池」です。
- 日本ガイシ株式会社が研究開発した蓄電池
- 世界初の超大容量電力を貯めることができる設備を実現
- 電極に危険物である硫黄とナトリウムを使用、作業する時に温度を300度に維持するなど、細心の注意を払って取り扱う必要性がある
- メガワット級の電力を貯蔵できるだけでなく、安価で設置場所の制約がない
蓄電池が広まった理由
蓄電池が一般家庭に広まった理由は以下の通りです。
電気代を安くすることができる
1つ目は「電気代を安くすることができる」からです。
太陽光発電設備で作った電気を太陽の出ている時間帯に使用し、あまった電気を蓄電池に貯めて、夜に使用します。これを「自家発電自家消費」といいます。
完全なる自家発電自家消費は難しいため、電気料金が安くなる深夜に電力会社から足りない分の電気を購入して使うと、電気会社への電気代を極力少なくすることができます。
電気代は年々上昇し続けており、北海道電力や関西電力など、大手電力会社10社の2021年12月の電気料金は、前月に比べておよそ70円~140円値上がりしました。
2021年1月と12月を比較した場合、料金の値上げ幅は約500円~1,200円であり、過去10年間でも最も高いレベルといえるでしょう。電気料金が高くなる理由は、燃料費調整額が上昇しているからです。
燃料費調整額とは、火力発電所で使う燃料の輸入価格変動分を調整し、安定的に電気供給するための料金です。燃料費調整額は原油・LNG(液化天然ガス)・石炭などの貿易価格上昇など世界情勢によって価格が変動します。
災害における備えにできる
2つ目は「災害における備えにできる」からです。
災害によって電線が切れてしまい、電力会社から電気を送ることができなくなってしまう可能性があります。ただでさえ不安な状態なのに、電気が使えない生活はさらに重くのしかかるでしょう。
夏や冬などに空調が止まってしまう、個人医院で患者の電子カルテが見れないなど、命の危険さえあります。
しかし、蓄電池があれば停電になっても電気のある生活をある程度送ることができます。太陽光発電と連携させれば、天候が悪くなければ電気通電までしのぐことができるかもしれません。そのため、災害時に避難所となる小学校などでは蓄電池を導入し始めている所が増えつつあります。
節電や電気代削減に役立てる
3つ目は「節電や電気代削減に役立てる」からです。
蓄電池はピークカットとピークシフトを行うことで、節電や電気代削減に非常に役立ちます。
- ピークカット:電気使用量が多い時間帯に一日単位や年単位で最大量電力(ピーク電力)を低く抑えること
- ピークシフト:あまり電気を使わない休日や夜間などに蓄電池で電力を貯め、電力を多く使う時間帯に放電し、購入電力最大量を削減することです。
蓄電池導入メリット
蓄電池を導入するメリットは、以下の通りです。
- 電気代抑制:電力会社から購入した電気を蓄電池に貯めて、電気使用量の多い時間帯(ピーク時)に放電
- 太陽光発電設備と連携できる:日中に電気を蓄え夕方や夜間に使用すると電力会社から極力電気を購入せずに済み、電気代削減に繋がる
- 非常時に電気を使える:1週間以上停電するかもしれない大規模災害でも電気のある生活ができる
蓄電池導入デメリット
蓄電池導入デメリットは以下の通りです。
- 初期費用が高い:家庭用蓄電池で100万円から200万円程度の設置費用が必要となる
- 設置に不向きな場所がある:直射日光が当たる場所や寒冷地、塩害地域など
- 寿命が20年程度:15年経過後、容量が70%まで低下
蓄電池の選び方
- 蓄電池の選び方は以下の通りです。
- ライフスタイルに合わせた容量を選ぶ
- 200V対応のものを選ぶ
- 停電時、電気を家全体で使う(全負荷型)か、家の一部で使う(特定負荷型)か
まとめ
今回は蓄電池をわかりやすく解説してきました。以下まとめになります。
- 蓄電池とは充電により繰り返し使用することが出来る大型充電器
- 電気の無い生活は非常に不安で困難なので、蓄電池はいざという備えとして優秀
- 蓄電池は高額なので、蓄電池検討の場合はまずメリット・デメリットを考慮し、自分の家に必要な蓄電池の容量や機種は何か考える
蓄電池は私達にとって、電気代抑制・削減だけでなく、地震などの災害停電が発生しても電気のある生活を送る事ができるなど、私達の生活を助けてくれる身近な存在といえるでしょう。ぜひこの機会に蓄電池導入を検討してみてはいかがでしょうか。