2022年4月時点、ウクライナ問題などにより、全世界で燃料不足となり、世界的なエネルギー価格高騰化に伴う原材料や電気代の値上げが止まらない状が続いています。
また、大手電力会社10社の電気料金は2016年の電力自由化以降最高水準となりました。
そうした中、コロナ禍により自宅で仕事をするライフスタイルへと変化し、電気料金が高い日中に電気を使う人にとっては大きな痛手となるでしょう。少しでも電気代を抑えるためにはどうしたらいいのでしょうか。2022年の断続的な電気代値上げに対して、太陽光パネルと蓄電池をセットにして光熱費節約を目指す家庭が増えつつあります。今回は蓄電池と2022年の電気代値上げについて解説します。
電気料金の構成
電気料金が年々値上がりし続ける背景を知るために、まずは電気料金の内訳構成を確認しておきましょう。電気料金は以下で構成されています。
基本料金
1つ目は「基本料金」です。
基本料金とは、電気を使用しなくても発生する最低料金のことです。契約アンペア(A)数によって基本料金は変わり、アンペア数が高くなるほど基本料金も高くなります。
従量料金
2つ目は「従量料金」です。
従量料金とは、使用した電気量に応じて発生する料金のことです。たとえば、市場連動性を採用している電力会社の場合、寒波や熱波発生などによって冷暖房の使用電気量が増加し、従量料金も増えていきます。
燃料調整費
3つ目は「燃料調整費」です。
燃料調整費とは、過去3か月間に火力発電に使用された原油・液化天然ガス・石炭など、発電エネルギー源の貿易統計価格に基づいて算出される平均燃料価格と基準燃料価格の差料金のことで、2か月後の電気代に反映させる仕組みとなっています。
日本の電力会社が輸入している液化天然ガスの大半は、3ヵ月の原油価格により変動する、10年程度の長期契約を締結しています。そのため、ロシアのウクライナ進行による原油価格高騰など、原油価格が上がれば液化天然ガス価格も上がり、電気代の値上がりに繋がっていくでしょう。
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)
4つ目は「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」です。
再エネ賦課金とは、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」に基づき再生可能エネルギーでつくられた電気を、電力会社が買取にかかる費用を負担する料金のことです。単価は全国一律で、毎年変動します。
電気料金が上がり続ける理由とは
2022年4月、大手電力会社10社の内7社が一般家庭向けの電気料金を値上げしました。
電力会社 | 中部 | 東京 | 東北 | 沖縄 | 九州 | 北海道 | 四国 | 中国 | 関西 | 北陸 |
月額値上 | 127円 | 115円 | 98円 | 65円 | 57円 | 56円 | 52円 | ±0 | ±0 | ±0 |
この値上げは、電気がなくては生活ができない私たちの家計に直撃しています。一般家庭向け電気料金推移は以下の通りです。
年度 | 2010年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
円/kWh | 20.4円 | 22.4円 | 23.7円 | 25.0円 | 24.8円 | 23.2円 |
(参照:経済産業省資源エネルギー庁HPhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2021/002/#section1 )
2020年度の電気料金は、2019年度に比べると約6%下落していますが、2010年度に比べると約14%も上昇しています。考えられる要因は以下の通りです。
燃料価格の高騰
1つ目が「燃料価格の高騰」です。
日本が発電している電気のうち、約75%は火力発電です。火力発電燃料の内訳は以下の通りであり、液化天然ガスと石炭に依存していることがわかります。
- 液化天然ガス=37.6%
- 石炭=29.7%
- 石油=1.5%
- その他=31.2%
上記の燃料は海外からの輸入に依存しています。2022年にウクライナへ侵攻したロシアへの経済制裁が、液化天然ガスや原油などのエネルギー価格の大幅上昇を引き起こし、原油価格の高騰が止まらず、原油価格をベースに決まるLNGの長期契約についても値上がりが避けられない状況です。そのため、日本の電気料金は今後も値上がりしていくのではないかと予想されています。
再生可能エネルギーの拡大とコスト
2つ目は「再生可能エネルギーの拡大とコスト」です。
再生可能エネルギーとは、石油などの化石燃料と異なり、枯渇することなく半永久的に利用できる太陽光発電や風力発電、水力発電などの自然エネルギーです。
再エネ普及と安定的供給を実現を目的として、固定価格買取制度が導入され、全ての電気利用者は再エネ賦課金という形で電気料金へ上乗せされています。
再エネ賦課金の推移は以下の通りです。
電気料金適用期間 | 再エネ賦課金 (1kWhにつき) | 月額再エネ賦課金 (使用電力量300kWh/月) | 年間再エネ賦課金(使用電力量300kWh/年) |
---|---|---|---|
2012年8月分から2013年4月分まで | 0.22円 | 66円 | 792円 |
2013年5月分から2014年4月分まで | 0.35円 | 105円 | 1,260円 |
2014年5月分から2015年4月分まで | 0.75円 | 225円 | 2,700円 |
2015年5月分から2016年4月分まで | 1.58円 | 474円 | 5,688円 |
2016年5月分から2017年4月分まで | 2.25円 | 675円 | 8,100円 |
2017年5月分から2018年4月分まで | 2.64円 | 792円 | 9,504円 |
2018年5月分から2019年4月分まで | 2.90円 | 870円 | 10,440円 |
2019年5月分から2020年4月分まで | 2.95円 | 885円 | 10,620円 |
2020年5月分から2021年4月分まで | 2.98円 | 894円 | 10,728円 |
2021年5月分から2022年4月分まで | 3.36円 | 1,008円 | 12,096円 |
2022年5月分から2023年4月分まで | 3.45円 | 1,035円 | 12,420円 |
参照元:東京電力ホールディングス(https://www.tepco.co.jp/ep/notice/news/2022/1695928_8910.html )
再エネ賦課金は、年々上昇しているのがわかります。
月額再エネ賦課金は、「1か月の使用電気量(kWh)×再エネ発電賦課金単価(円/kWh)」で算出されます。
標準家庭の1か月の電気使用量を300kWhとして計算した場合、2012年と2022年の再エネ賦課金の差は1kWhにつき3.23円、月額969円、年間額11,628円であり、2012年から約1500%も上昇しています。まったく同じ量の電気を消費したとしても、その負担額は大きな痛手となるでしょう。
電気料金を抑えるためには、電気代の節約だけでなく、食費削減などの電気代以外の節約が必要不可欠となってきます。
電気料金を抑えるためには
新型コロナウイルスの影響により、在宅時間を過ごす人が増えたため、使用頻度によって想像している以上に電気料金が高くなっている可能性があります。電気料金を少しでも抑えるためにできることを紹介します。
待機電力を減らす
1つ目は「待機電力を減らす」です。
待機電力とは、家電製品の電源が切れている状態でも消費する電気のことです。
待機電力は、家電製品をコンセントに差したままにしていると消費し続けます。一般家庭の年間消費電力量の約6%を占めていると言われており、待機電力が高い家電製品には、ガス温水器やテレビ、エアコン、電話機などがあります。
待機電力を減らすには、外出する際に必要のない家電製品の電源を、こまめにコンセントから抜くように心がけましょう。
また、出張や旅行で長期間家を空ける時には、ブレーカーを落とすことでコンセントを抜くことなく家中の待機電力をオフにすることが可能です。
電気料金が高い時間帯の使用を避ける
2つ目は「電気料金が高い時間帯の使用を避ける」です。
電気料金は、使用した電気量に応じて料金加算される従量課金制です。しかし、一部電力会社では、電力需要が特定の時間帯に集中するのを回避するために、通常の従量課金制の他に、昼と夜で電気の単価が変わる『時間帯別電灯制』を取り入れているところがあります。
時間帯別電灯制とは、昼間(午前7時〜午後11時)と夜間(午後11時〜翌午前7時)に区分して電気料金を課金する制度のことです。
大手電力会社を例に出すと、東京電力の「スマートライフプラン」、関西電力の「はぴeタイム」などがあります。
この時間帯別電灯制は、従来課金制度と比較すると昼間料金はやや割高ですが、夜間料金はお得になるため、このプランで契約している場合は、昼間の電気使用を極力抑えて、夜間に使うように心がけましょう。
電力会社・ガス会社ごとに見直す
3つ目は「電力会社・ガス会社ごとに見直す」です。
日本では、2016年4月から電力の自由化、2017年4月からガスの自由化が開始され、利用電力会社およびガス会社を自由に選択できるようになりました。
電気代とガス代をより安い方へ上手に乗り換えることができれば、今までと同じ使用状況でも大幅に節約することが可能となります。
その場合、基本料金と従量料金の総額で安くなるサービスを利用するように注意しましょう。たとえば、基本料金が安いA社と従量料金が安いB社では、利用状況によってはどちらがお得なのかが異なってきます。キャンペーンなどに流されず、必ず自分の利用状況を把握した上で会社・プラン選びを行うよう心がけましょう。
太陽光発電システムと蓄電池で自家消費する
4つ目は「太陽光発電システムと蓄電池で自家消費する」です。
蓄電池や太陽光発電システムは、初期費用が気軽に購入できる金額ではありませんが、長い目でみれば電力会社で電気を購入するよりも電気代を安く抑えることができ、節電できるでしょう。電気代を抑える蓄電池のメリットは以下の通りです。
いつもの電気料金を安くできる
1つ目が「いつもの電気料金を安くできる」ことです。
時間帯別電灯のプランを利用し、電気料金が安い夜間に電力を蓄電池に貯め、昼間にそれを使います。こうすることで、いつもと同じ電気を使用しているのに日々の電気料金を安くすることができます。
また、現在の蓄電池はAI技術が進歩しており、電気料金が安い時に自動で充電したり、電気の使い方を家庭ごとに学習することで、効率的に充放電できるものもあります。その中でも「経済モード」が搭載された機種は、夜間電力使用に便利なのでオススメします。
太陽光発電システムと組み合わせる
2つ目が「太陽光発電システムと組み合わせる」ことです。
固定価格買取制度(FIT制度)を利用した太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせた場合、自家消費を優先した余剰売電により10年間変わらない売電価格利益を得ることができます。FIT制度が終了すると売電価格が固定ではなくなるので、自家発電を自家消費する方がより効率的で高い経済的メリットを得ることができます。
太陽光発電システムでつくり出した電力を日中の電気代として使用し、余ったら蓄電池へと貯めます。夜は蓄電池の電気を使用し、足りない分は電力会社から購入します。
電力会社から購入する電力を極力減らすことができ、電気代を削減することができます。
太陽光発電と蓄電池は、太陽光さえあれば寿命の限り電力をつくり続けることができるため、環境に優しく、世界情勢による燃料価格高騰など、外部からの電気料金高騰の影響を少なくすることができます。
まとめ
蓄電池と2022年の電気代値上げについて解説してきました。以下まとめになります。
- 電気代値上げは、世界情勢による燃料高騰化や値上がりし続ける再エネ賦課金など様々な要因によりこの先も続くと予測されている
- 電気代を少しでも抑えるために待機電力を減らしたり、電力会社のプランを見直したりなどの工夫が必要
- 蓄電池と太陽光発電システムを導入すれば、太陽光を使って自家発電自家消費できるので、外部からの影響を受けることなく電気代を安く抑えることができる
電気代値上げは先の見えない新型コロナウイルス感染拡大や国家間対立や戦争による世界情勢など、様々な要因が複雑に絡まり合っているため、これから先もっと上がっていくと予想できるでしょう。少しでも電気料金を抑えるためには、節電行動を心がけるだけでなく、太陽光発電システムと蓄電池を導入して電気を自家発電自家消費するなど、遠い先の未来を見据えての行動が必要と言えるでしょう。蓄電池の値段は年々下がってきているので、補助金などを利用してこの機会に導入を検討し、電気代を抑えてみてはいかがでしょうか。