光熱費は抑えたいけど、ガスは使いたい。その場合、オール電化にした方がいいのか。どちらがお得になるのかは、各家庭のエネルギーの使い方によって変わります。近年、脱炭素化社会が叫ばれ、日本でも再生可能エネルギーである太陽光発電の普及が広がっています。再生可能エネルギー普及によって引き起こされる様々な要因によって、電気代とガス代が将来高騰化する可能性があります。オール電化、ガス併用共にどうすれば光熱費を削減できるのか。それは再生可能エネルギーである太陽光を活用し、さらに蓄電池を導入することで可能となります。今回は蓄電池とガス併用について解説します。
オール電化のメリット・デメリット
ガス併用とオール電化の大きな違いは、深夜料金を活用できるかどうかです。
ガス併用の多くの料金プランが、使えば使うほど電気料金も加算される従量電灯です。いかに電気使用量を減らすかが節約のカギとなります。
オール電化は基本料金を一本化でき、さらに節約を意識して安い深夜料金プランを利用すると、電気使用量を減らすことができます。それだけでなく、給湯や米の炊飯を深夜帯にまとめるなど、電気を使う時間を変更することで電気代削減ができます。
また、ガスを使わないので火災リスクやガス漏れリスクも減り、安全性が高いです。ガスコンロと違いIHはキッチンのお手入れも楽で、災害時にはエコキュート内の水を利用することができます。
しかし、オール電化は使える調理器具が制限されたり、深夜の電気が割安な分、昼間の電気が割高になります。
日中に夜間と同じくらい電気を使う場合は電気代が割高になり、ガス代を削減しても逆に電気料金が高くなって損をする場合があります。
また、初期費用が高額であり、台風や豪雨によって停電したときに住宅のほとんどの機能が止まってしまうため、非常時に備えて対策しておくことが必要です。
ガス併用のメリット・デメリット
ガス併用はオール電化と比較した場合、既にある設備やインフラを使用しますので、エネファームなどの特殊設備を導入しない限り初期費用は少ないです。
停電時でも調理や湯沸かしなどができる可能性が高くなるため、エネルギーを電気とガスに分けておくことで、災害時のリスク分散を行っている人もいます。プロパンガスではなく都市ガスならコストが安くなりますが、オール電化よりも安全性は劣ります。
しかし、エネルギー分散をすると基本料金もガスと電気両方にかかり、都市ガスの契約地域は限られています。また、火災やガス漏れのリスクも高く、換気も必須です。大規模地震などの災害時、ほとんど地下に埋められているガス管が破裂すると、電気や水道よりも復旧に時間がかかる可能性が高いです。2011年の東日本大震災では、復旧率9割を超えるまで、電気(約1週間)、水道(約3週間)、ガス(約5週間)の順番でした。
電気代はもっと上がっていく
メリット・デメリットを見ると、オール電化とガス併用のどちらがいいのかは一長一短です。両者に共通していえるのは、これから先も電気料金が上昇する可能性が高いので、何か対策を考えなければいけないということです。
現在、世界では脱炭素の動きが活発化しています。脱炭素社会を実現するには、温室効果ガスである二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギー活用が重要となってきます。
日本は2030年までに温室効果ガス削減を46%にするという目標があります。そのため、再生可能エネルギーを普及させようと、10年間再生可能エネルギーを特定電力会社が固定価格で買い取る固定価格買取制度(FIT)や補助金を出すなど、国をあげての政策を行っています。
再生可能エネルギーは太陽光や風力など、天候などの環境によって発電能力が左右されます。そのため、発電した電気を無駄なく利用できるように蓄電池設備が必要となってきます。そうなると、そこにつながる送電線も新増設しなければいけません。
インフラ設備を整える資金は、私たちの電気代に上乗せするという形になります。
電気料金はインフラ整備だけでなく、消費税の増加や再生可能エネルギー普及による再エネ賦課金の上昇、液化天然ガス(LNG)価格の高騰などにより、年間2%は電気代が上昇していくだろうと予想されています。
ガス料金も上がる可能性が高くなってきた
今後、世界的に排気ガスを出さない電気自動車(EV)の普及が進むと予測されるため、ガソリン使用は減りますが、その分莫大な電力が必要となります。再生可能エネルギーだけでは電力不足が発生してしまい、足りない部分は結局火力発電所で調整されます。そうなるとCO2発生が少ない天然ガス(LNG)の需要が世界的に高まり、取引価格の高騰が見込まれています。住宅で使われているガス料金の元もLNGですので、ガス料金も今後は高くなるでしょう。
再生可能エネルギー普及が進むからといって、光熱費削減が簡単に実現するわけではないのです。
太陽光と蓄電池が光熱費上昇対策になる
光熱費上昇を食い止める方法は、オール電化、ガス併用共に太陽光発電や蓄電池を設置することです。
太陽光発電で電気を作って自家消費することで、無駄な電気を電力会社から買わなければ光熱費は削減できます。
太陽光発電は、以前は売電収入や投資目的の人が少なくありませんでしたが、現在は電気代の高騰に備えて自家発電・自家消費を目指す人が増えています。国も電気代が上昇する見込みしかないので、新築住宅に太陽光発電設置を義務化する方針もまとめています。
太陽光発電で自家消費できなかった余剰電力は蓄電池に貯めておき、太陽光が得られない夜間などに利用することで光熱費を格段に抑えることができます。
どちらがオススメか
太陽光発電で得られるエネルギーは電力ですので、「オール電化が向いている」「ガス併用が向いている」という考えは家庭の状況によって変わってきます。
太陽光と蓄電池と組み合わせた場合、オール電化とガス併用どちらが向いているのかは以下の通りです。
オール電化がオススメの家庭
高い安全性と光熱費の管理のしやすさを求め、日中に在宅することが少ない家庭の場合、オール電化×太陽光発電×蓄電池はオススメです。設置状況や使用電力量にもよりますが、光熱費を半分以下にすることも可能です。
家にいない日中に太陽光発電で電気を作って蓄電池に貯め、帰ってきてから蓄電池の電気を使います。それでも足りない場合は、オール電化の深夜料金プランを活用すれば、電気料金を極力抑えた生活が可能となります。季節や時間帯によって電気料金が安くなる料金プランと併用すれば、消費電力量が多くなりがちな夜間の電気料金が約53%(東京電力での従量電灯B第2段階料金25.91円/kWhと電化上手夜間料金12.16円/kWhとの比較)も安くなるので一段とお得になります。
また、オール電化は安全性が高く、掃除が楽で光熱費の管理がしやすいです。もし長時間停電になった場合でも、太陽光発電なら自立運転モードに切り替えることで日射量に応じて最大1.5kWまで電気を供給できるため、災害時に電気が止まると何もできなくなるというオール電化のデメリットを補います。
さらに、エネファーム(東京ガス株式会社・大阪ガス株式会社・JXエネルギー株式会社の登録商標)などのオール電化システムと太陽光発電システムを併用すれば、作り出す電気量を増やすことができ、余剰電力は自家消費だけでなく電力会社に売ることもでき、より効率的な電気の使用が可能となります。深夜の安い電気と太陽に温められた空気熱を利用すれば、ヒートポンプでお湯を沸かし貯湯することもできます。
ガス併用がオススメな家庭
調理にこだわりがあり、一日中家にいることが多い家庭の場合、ガス併用×太陽光発電×蓄電池がオススメです。
天然ガスを利用したマイホーム発電エコウィル(大阪ガス株式会社の登録商標)やエネファームと太陽光発電を合わせたW発電で、電気とガスをベストミックスさせ消費電力を抑え、資源を有効活用して光熱費を大幅削減します。
天然ガスと太陽光発電システムを併用することで、たっぷりと電気をつくることができるので自家消費を行うことができます。余剰電力は蓄電池に貯めたり、電力会社に売る事ができ、光熱費やCO2排出量も削減できます。
また、「料理はやっぱりガスが良い」とお考えで、ガスを使い続けたい方にW発電はオススメです。
家のエネルギー利用の中で最も多くを占めるのは給湯です。そのため、光熱費を削りたい場合、給湯機を変えるのが手っ取り早いといえます。
プロパンガスのエコジョーズをエコキュートに買い替えるだけで、3人家族で15年間使った場合、50万円以上お得になります。プロパンガスは都市ガスに比べてかなり高いので、エコキュートもしくは石油給湯器への交換をオススメします。
ただし、都市ガスを利用しているなど元々ガス料金が3,000~4,000円の場合、エコキュート(関西電力株式会社の登録商標)などを導入しても元が取れない場合があるので、オール電化にすると逆に光熱費が高くなってしまいます。
しかし、ガス代も近い将来上昇する可能性が高いため、正確にどちらがいいのか迷っている場合は、オール電化にした場合のシミュレーションを行うのがいいでしょう。
まとめ
蓄電池とガス併用について解説してきました。以下、まとめとなります。
・再生可能エネルギー普及拡大につれて、電気代もガス代も将来高騰化する可能性がある
・オール電化×太陽光×蓄電池は、高い安全性と簡単な光熱費管理を求めていて、日中家にあまりいない家庭にオススメ
・ガス併用×太陽光×蓄電池は、ガスによる調理方法と給湯による光熱費削減を求めていて、一日中家にいることが多い家庭にオススメ
脱炭素化に向けた再生可能エネルギー普及によって、今後電気代とガス代は増える可能性が高いです。そのための工夫として太陽光と蓄電池の導入をオススメします。
オール電化とガス併用のそれぞれを太陽光・蓄電池と組み合わせれば、メリットを活かしてデメリットを補うことができ、光熱費削減に繋がります。どちらが良いのかは各家庭のエネルギー使用量によって異なりますので、一度専門家に相談してみるのもいいかもしれません。この機会に、お得に光熱費を削減してみてはいかがでしょうか。