災害が起こった時、住民や店舗、事務所、市町村役場などの行政に携わる団体機関も被害を受けて機能しなくなる可能性を想定しておかなければいけません。災害により、長期的で大規模な停電が発生するとたちまち生活に困ってしまいます。災害時には系統電力から安定的で十分な電力供給が見込めないため、普段から蓄電池を導入するなど、防災意識を高め、自立型・分散型の電源確保をしておく必要があるでしょう。
地震などの災害時、自治体が主体的な指示や動きを行わなければいけません。不測の事態に備えて、BCPを予め策定する必要があります。長期的な停電を見通して、避難所に蓄電池の導入も検討しなければいけません。今回は自治体による防災と蓄電池について解説します。
業務継続計画
災害が大規模の場合、市町村は災害対応において、主体的な指示や動きが求められます。市町村などの自治体は被害を受けても一定の業務を行えるようにし、業務継続計画(BCP= Business Continuity Plan)を策定する必要があります。2015年5月、防災担当の内閣府により「市町村のための業務継続計画作成ガイド」は取りまとめられました。
しかし、災害時に地方公共団体への被害が出て、災害対応ができなくなった場合も複数あります。
2004年:新潟県中越地震
停電によって県の防災行政無線、庁舎3階に設置されていた同報無線が使用不能になる
2011年:東日本大震災
28もの本庁舎が使えなくなった市町村があり、庁舎内の重要データが失われる
2014年:徳島県三好市等の大雪被害
豪雪により停電が起こり、庁舎に非常用発電機があったものの、燃料はわずか半日しかもたなかった
2015年:茨城県常総市等の鬼怒川水害
大規模な土砂災害が発生し、町長と副町長は出張中であり、防災担当は帰宅して不在だったため初動が大幅に遅れた
上記のように、庁舎が直接被害を受けたことで災害対応ができなかったり、市町村長不在により初動が遅れたりと不測の事態が実際に起こっています。災害時にこのような状況になった場合でも、一定の業務ができるように各市町村は業務継続計画を策定し、その対策を事前に準備しなければいけません。
業務継続計画で重要なこと
自治体は以下の要素を元に業務継続計画を策定します。
・首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制
・本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定
・電気、水、食料等をはじめとした必要資源の備蓄・設備増強・確保
・災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保
・重要な行政データのバックアップ
・非常時優先業務の整理
地方自治体による業務継続計画策定は、住民の暮らしを守るだけでなく、行政の動きを止めさせないことで、災害による被害拡大を食い止める計画であることがわかります。
業務継続計画を一度策定したら、災害時に有効活用できるよう計画の実効性を確認し、教育・訓練を繰り返し実施することが重要です。非常参集訓練のほか、安否確認訓練、非常通信訓練、情報システムのバックアップや復旧訓練など、実際に訓練を行ってわかる課題や改善点を元に、業務継続計画へ反映させ、適宜改善させていくことが大切です。
避難所設置において自治体が求められること
災害時の避難場所設営など、コロナ禍が続いている2021年現在、自治体はコロナ対策品と蓄電池を準備しておくべきでしょう。
日本は災害大国であり、いつ災害が起こるか正確に予測することは難しいです。更にコロナによるクラスターリスクが警戒されているため、それを踏まえた上での十分な対策が重要となってきます。スマートフォンは避難情報をいち早く知るうえで重要なキーデバイスですが、避難所では充電などの電源確保が難しい場合があります。特に長時間停電が続いてしまうと、避難所内の安全性を保つために蓄電池の必要性が高まってくるでしょう。
コロナ対策品:コロナ抗原検査キット
コロナ対策品としてオススメなのがコロナ抗原検査キットです。
コロナ抗原検査キットは、15分前後でコロナ感染の有無が判定でき、正確さも90%まで高まってきています。コロナ抗原検査キットを避難所に配備し、受付時に感染確認することによって、クラスターを回避できるかもしれません。
コロナ対策品:オートミスト
オートミストもコロナ対策品としてオススメです。
ポンプ式アルコール除菌液は、たくさんの人がポンプヘッドを押す内にコロナウイルスが付着し、そこから感染が広がる交差感染するリスクが高いことが分かってきました。オートミストは手をかざすと反応して消毒液を吹きかけてくれます。非接触で除菌液を噴射できるため、避難所や庁舎入口に大型のタイプを設置し、部署ごとに小型のものを設置すれば、消毒を徹底する事ができるでしょう。
停電対策に蓄電池:キャリーバック型蓄電池
内閣府「指定避難所等における良好な生活環境を確保するための推進策検討調査報告書」(平成30年8月)によると、最低限の避難所環境に必要なものとして「水」「食料」「トイレ」「暑さ・寒さ対策」に次いで多かったのが「携帯電話・スマートフォンの充電」という回答が多く、その割合は約66%に達していました。もはやスマートフォンは私達の生活において切っても切り離せない存在になりつつあるといえます。
国は自治体に対し、「大規模災害発生時、人命救助の観点から72時間は外部からの供給なしで非常用電源を稼働できるようにしておくことが望ましい」と指導しているため、3日間バッテリーが持つ非常用電源が避難所に必要となります。そのため、各自治体で蓄電池の需要が伸びています。蓄電池は持ち運びができる手軽なポータブルタイプと、据え置きタイプがあります。
特に「D-Power6000」という蓄電池は、定格出力300W・蓄電容量6,000Wという大容量であり、緊急時にスムーズに電力供給ができます。キャリ-バッグタイプなのでどこでも持ち運びができて、非常に便利です。キャリーバーとキャスターが標準装備で付いているので、転がして楽に移動できます。重量は約48kg、サイズは560mm×450mm×200mmと、普通のキャリーバッグ程度の大きさです。そのため、誰でもどこでも使えるポータブル電源として、庁舎や公共施設に場所を取らずに備えておくことが可能です。災害時だけでなく、ロケなどの野外撮影、キャンプ、スポーツイベント、祭りや屋台、ステージイベントなど屋外で行う様々な自治体のイベントでも活用できます。
非常用バッテリーはたくさんの種類がありますが、6,000Whと大容量なのに持ち運びもできるものはそうそうありません。従来の蓄電池では難しかった高出力の機器も複数同時に使うことが可能です。東京都の立川市はD-POWER6000を、世田谷区は3,000Whのタイプを防災のために、すでに取り入れています。
スマートフォンの充電(10W)なら約600台、ノートパソコン(25W)なら約10日間、小型冷蔵庫(100W)なら約2日半、液晶テレビ(300W)なら約20時間使用することができるので、100人程度の避難所なら3日間は充分に屋内の照明や避難所に集まった市民のスマホ充電用として活躍できるでしょう。
また、蓄電池はエンジンやガスの発電機と異なりクリーンな電気なので、室内での使用が可能です。避難所の拠点となるような基幹施設では、6,000Whの蓄電池でカバーできないこともあるかもしれません。その場合、太陽光発電と連動させれば、日中は太陽光が太陽光パネルに当たって発電し、蓄電池に電力を蓄える事によって、さらに大容量の電気を供給する事ができます。
増加しつつある非常用電源設備導入を進めている自治体
災害直後は土砂崩れによる道路封鎖、流通の乱れによる物資不足などで孤立化の可能性が高くなります。そのため、72時間(3日間)の事業継続の手段として、非常用の電源設備導入の検討を本格的に進めている地方自治体、保育・介護施設などが増えています。
千葉県千葉市の自治体は、災害時の電力対策に市内避難所182ヶ所に太陽光発電設備と蓄電池を導入しました。2020年から2022年の間で段階的に配備を進めています。
神奈川県横浜市では2020年青葉区、都筑区、緑区の小中学校12校に蓄電池を導入し、2019年度と合わせて計25施設への蓄電池設置となりました。
また、千葉県のスポーツクラブ・ルネサンス社では、千葉市にあるルネサンス稲毛24に送迎用EVバスを導入し、EVバスのバッテリーを災害時に建物の照明や給水などの非常用電源として活用できるシステムを採用しています。
年々深刻化する自然災害に備え、自治体は地域の防災拠点になる役割を担うことも期待されています。しかし未整備であったり、設備を持っていてもいざという時にその役目を果たせない可能性があります。そのため、長時間の停電に対応できる非常時の電源確保は重要だといえるでしょう。
まとめ
自治体による防災と蓄電池について解説してきました。以下、まとめになります。
・災害時、迅速な対応ができるように、自治体はあらかじめBCP(業務継続計画)を策定する必要がある
・国は自治体に対し、「大規模災害発生時、人命救助の観点から72時間は外部からの供給なしで非常用電源を稼働できるようにしておくことが望ましい」と指導している
・防災として蓄電池を導入する自治体が増えつつある
非常用電源設備を省エネ対策も兼ね備えたものにすることで、「平常時」の電力コストを削減して導入費用を補えることになります。そのため、蓄電池の選び方のポイントとして、「平常時」と「災害時」を念頭において、屋内・屋外、設置スペースや配線、運転音などについて検討する必要性が出てくるでしょう。
災害により長期間停電し、電気が使えない状態になれば、精神的にも肉体的にもストレスがかかり、不安で押しつぶされそうになるでしょう。そうならないためにも、自治体は防災意識を常に持ち、コロナ対策グッズや蓄電池を導入し、いざという時に市民を安全に避難、誘導できるように準備しておくことが望まれます。