PID対策していない太陽電池は蓄電池と接続できない? 発電量を低下させるPID現象とは!

太陽光発電システムは約20~30年も寿命があり、蓄電池と組み合わせると自家消費や売電に非常にメリットが生じます。国が推奨しているのもあって、太陽光発電と蓄電池、さらにエコキュートを組み合わせて設置する家庭は増えつつあるのではないでしょうか。
太陽光発電と蓄電池は発電量が一目で確認できるシステムがついていることが多いです。小まめにチェックすることで、節電意識にも繋がります。
太陽光電池は汚れていない、配線にも問題がない、パワーコンディショナーの故障もないのに、モニターをチェックすると発電量が20~30%も落ちている場合、「PID」現象が原因かもしれません。PIDは主に結晶シリコン型太陽光パネルで生じます。今回はPIDについて解説します。

PIDとは

PID(Potential Induced Degradation)とは、直訳すると「電圧誘起(誘発)出力低下(劣化)」を意味します。産業用の太陽光発電システムなど、高電圧を発生させる太陽光発電システムで、太陽光発電モジュールと、それを支える金属フレームの間で漏れ電流が発生し、出力の低下を招く現象のことをいいます。簡単に説明すると、太陽光発電システムにおける性能劣化現象のことです。
太陽光パネルは屋根に設置され、常に雨風や炎天下などにさらされている状態です。その環境下で太陽光パネルのモジュール回路内に「漏れ電流」が発生すると、太陽光発電の出力が落ちてしまいます。この現象を「PID現象」「電圧誘起出力低下現象」といいます。結晶シリコン系太陽電池の発電能力を大幅に劣化させる現象です。

PIDの原因

PID現象は大規模な太陽光発電の建設を早期から取り組んでいるヨーロッパにおいて先立って報告されていました。日本は高温多湿でPID現象が起こりやすいですが、電圧が比較的低い住宅用太陽光発電システムではPID劣化が起こる可能性は低いです。国内で問題が顕著化してきたのは固定価格買取制度後、メガソーラーのような大規模な産業用太陽光発電施設が次々に建設されはじめた頃だと言われています。

産業用などの大規模な設備では、多くの太陽光発電パネルが直列に接続されているため、システムがより高電圧化します。太陽電池の回路内に本来電流が流れるべきでない漏れ電流が発生し、太陽電池セルの電気特性が変化することで太陽電池の出力を大きく低下させてしまいます。そうなると、フレームとモジュール内部の回路の電位差が大きくなり、陰極に近いモジュールに影響が出てしまうのです。

PID対策

PID現象により太陽光電池の出力が低下すると売電収入が落ち込むため、太陽光発電事業には大打撃です。長期間安心して太陽光発電を行う対策は次の通りです。

・太陽電池の負極接地
・両面ガラスモジュール

太陽電池の負極接地

「太陽電池の負極接地」とは、太陽電池の負極を接地させる、つまり負極側を大地に落とすことを指します。
1枚の太陽電池の中では、電位差はわずかでも、太陽電池を直列に複数枚つなぐことで、一番端の正極から負極までの電位差は大きくなります。この電位差が大きいと、太陽電池のカバーガラス面から漏れ電流が流れ込み、太陽電池の出力低下の原因であるプラスイオンが侵入してしまいます。
太陽電池の負極を接地することで、大地に対してすべての太陽電池の電位が正側となり、プラスイオンの侵入が発生しなくなります。その結果、PID現象が起こりにくくなります。

しかし、負極接地はパワーコンディショナーの種類によってできるかどうか変わってきます。太陽電池と電力系統側が絶縁されていないトランスレス(非絶縁)方式のパワーコンディショナーは電力系統側を設置されているため、太陽電池側を接地すると還流ループができてしまい、直流側の地絡電流が流れてしまうからです。
PID対策をしたい場合は、絶縁トランス内臓のパワーコンディショナーかどうか購入前に調べるのがオススメです。

両面ガラスモジュール

PIDは、太陽光パネルや発電システムを構成する部材の種類のほか、高温・高湿、システム電圧などの条件が影響して生じるといわれています。

太陽電池セルからパネルのフレームに電流が漏れ、カバーガラス内のイオンが移動し、セルの電気的特性が変化した結果パネルの出力低下に繋がります。
その対策として、ガラス基板への参加膜の形成や、封止材に透湿性がより低いエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を採用することで、イオンの移動を押さえ、湿気の侵入を防ぎます。

高温多湿によりフレームに電流が漏れる対策として、フレームがなく、さらに両面をガラスで封止しているパネルを使えば、従来フレーム付きで生じているPID現象の抑制だけでなく、PID現象を根源から断絶することができるでしょう。

PIDは対策が投じにくい理由

PID現象は、実際にシステムとして設置した後に実地で使用して初めて確認できるという特徴があります。そのため、製造時の品質管理では防ぎようがなく、実際に劣化が起こったとしてもそれが本当にPIDによるものなのか確定しづらく、問題視されていても対策が投じられるのに時間がかかりました。経年劣化とは異なり、設置から数年で発生することもあります。

また、住宅用の太陽光発電システムでは電圧がそれほど高くなることがなかったため、問題にはなっていませんでした。2012年7月から全量買取制度(FIT)が始まり、太陽光発電所が急増したことで、日本でも顕在化してきています。

PID問題について本気で取り組んだ最初のメーカーはアメリカ大手のサンパワーだと言われています。実際に稼働している発電事業からパネルを数枚抜きだす形で出力検査を行いました。

PID耐性

規格化された認証試験のないPID耐性では、それぞれのメーカーが製造する太陽光パネルのサンプルを一枚または複数枚使って第三者機関やメーカー独自で実証テストをすることで、耐性証明としています。
PID耐性についての試験は、IEC(International Electrotechnical Commission: 国際電気標準会議)において、温度60℃、湿度85%、96時間という基準を設けていますが、規格ではないため基準設定は様々になっています。
また、第三者検証機関が行う試験とメーカーが独自で行っている試験があります。

太陽光パネルメーカー各社は、PIDに対する耐性を高めたパネルを製品化するようになり、現在、市販されているパネルは、ほぼPID耐性を高めたパネルとなっています。

PIDを抑制する技術開発

独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)はサスティナブル・テクノロジー株式会社(STi社)と酸化チタン系の複合金属化合物薄膜をガラス基板にコーティングして、PID現象による結晶シリコン太陽電池の出力低下を抑制する技術を開発しました。
PIDの主な原因とされているガラスからのナトリウムイオン等の拡散が、酸化チタン系複合金属化合物薄膜によりブロックされたため、PID現象による出力低下が抑えられたと考察されています。
実験のポイントは以下の通りです。

・酸化チタン系の複合金属化合物薄膜を用いて、PID現象による出力低下を抑制
・ガラス基板への塗布・低温焼成により、低コストで簡便に製膜

薄膜を塗布していない標準型モジュールの変換効率はPID試験後15.9%から0.6%へと大幅に低下しました。よってこの実験は、メガソーラーなどの太陽光発電システムの大量導入とその長期信頼性向上への貢献に期待できるといえるでしょう。

PID対策していないと蓄電池に接続できない場合がある

太陽光発電と併用するとメリットが高い蓄電池ですが、PID未対策の太陽光パネルの場合、接続できない場合があります。

蓄電池の中には、大型リチウムイオン電池を使用した蓄電システムと太陽光発電システムのパワーコンディショナーを一体化した「ハイブリッド蓄電システム」というものもあります。
太陽電池で発電した電力や商用電源から供給される電力を貯めて、必要なときに電気を活用することができます。太陽電池と蓄電池が自動で連携するため、効率のよい安定した電力供給が可能です。大容量で、パワーコンディショナーを壁掛け式にできるものも出てきているため、長時間の停電時に安心して備えることができ、設置床面積の省スペース化に成功しています。

しかし、PID対策がされていない太陽光パネルの場合、蓄電池には接続できない可能性が高くなります。技術的に接続は可能ですが、動作保証がありません。
現在ではどのメーカーの太陽光パネルもPID対策を行っていますが、10年前の太陽光パネルであればPID対策がされていない可能性が高いです。FIT制度が始まった時に太陽光発電を設置し、その後10年経過した既設の太陽光発電パネルの場合、PID対策がされていないと蓄電池設置に適していないため、要注意です。

せっかく素晴らしい機能を持ったハイブリッド型蓄電池を導入しようとしても、すでにある太陽光発電のパネルと接続できないのであれば意味がありません。そうならないために、事前に自分達の太陽光パネルはPID対策がされているものなのか調べてみてください。もしそうでない場合、太陽光パネルをPID対策されているものに買い替えるという選択肢も生まれてきます。
蓄電池と太陽光発電を組み合わせれば、売電収入も自家消費も各段によくなります。しかし、太陽光パネルは10年前に比べて安くなりつつありますが、それでもやはり高い商品です。太陽光発電を買い替えてまでそのメリットを得られるかどうか。まずは自分達の電気消費量や売電量をチェックしてから検討してみましょう。

まとめ

PIDについて解説してきました。以下、まとめになります。

・PIDとは、設置時には確認できず、太陽光パネルに高い電圧がかかり、出力が低下する不具合のこと
・「太陽電池の負極接地」はPID対策に有効である
・PID対策をしていない太陽光パネルは、蓄電池によっては接続できない場合がある

メガソーラーなど商業用設備の高電圧で発生しやすいPIDですが、最近ではほとんどのメーカーがPID対策を行っています。そのため、近年はPIDによって大打撃を受けたというニュースはあまり聞かれません。しかし、FIT導入時に設置した古い太陽光発電の場合、PID対策がされていない太陽光パネルの可能性があります。PID対策をしていないと、発電量が下がるだけでなく、蓄電池と接続もできなくなる可能性があります。自分の太陽光パネルはPID対策しているのかどうか一度調べてみてはいかがでしょうか。

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蓄電池コンシェルジュ代表
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