ペロブスカイト太陽電池と蓄電池を組み合わせれば、自家発電自家消費を場所に縛られることなく行うことができる!

現代を生きる私たちにとって、切実な問題としてエネルギー供給問題があります。資源に限りのある石油燃料だけでなく、再生可能で環境にやさしいエネルギーを開発していく必要があります。その中でも注目を集めているのがほぼ無限に使える太陽光発電です。しかし、現在普及している太陽光発電はシリコンを材料に用いるため、コストも高く、設置場所も確保しなければいけません。そこで世界中から研究されているのが日本発の技術「ペロブスカイト太陽電池」です。ペロブスカイト太陽電池の最大の魅力は塗布するだけで太陽光発電ができることです。今回はペロブスカイトと蓄電池について解説していきます。

ペロブスカイト太陽光電池とは

ペロブスカイト太陽光電池とは、ペロブスカイト半導体を使用した太陽電池で、シリコン系電池に迫る16%を超える今までのどの材料にもない圧倒的なスピードで変換効率が進化している太陽電池の一つです。

ペロブスカイトとは、ロシアのウラル山脈から得られるチタン酸カルシウムの鉱物名です。

ペロブスカイト構造とは、結晶構造の一つです。ペロブスカイト(灰チタン石CaTiO3)と同じ結晶構造、BaTiO3(チタン酸バリウム)のように、(A)(B)(X3) という3元系から成る遷移金属酸化物などをペロブスカイト構造と呼んでいます。

太陽光電池の種類は原料として使われる半導体によって異なります。現在量産されている多くの太陽光電池のタイプは以下の通りです。

・シリコン系太陽電池
・化合物系太陽電池

これらの太陽電池は壊れにくく、高変換効率が高いものでは25%を達成していますが、材料や製造コストが比較的高く、シリコン系太陽電池ではシリコンが厚く、曲げることができないため設置場所が制限されていました。

2009年、日本の宮坂力教授らの研究チームは、ペロブスカイト結晶の薄膜を発電部に使用し、太陽電池として動作することを突き止めました。ペロブスカイト太陽光電池は、ほかの固体接合太陽電池と異なり、化学工程で作ることを特徴とする「化学で作る太陽電池」の典型です。2013年からは、JSTの先端的低炭素化技術開発(ALCA)が取り組む「太陽電池および太陽エネルギー利用システム」に参画し、現在では実用技術化プロジェクトのなかで、有機無機ハイブリッド高効率太陽電池の研究開発を世界レベルでリードしています。

ペロブスカイト太陽電池は、結晶がペロブスカイト構造の有機-無機化合物(CH3NH3PbX3【X =ハロゲン】)など)から成っています。この構造のイオンはBサイトに鉛(Pb2+)、Xサイトにヨウ素(I-)、 Aサイトにメチルアンモニウム(CH3NH3+)が入り、それが立方晶配列を形成しています。

ペロブスカイト層で吸収された光は、原子から電子を運び去り、正の電荷を帯びた電子空孔(正孔)を作ります。それから、電子を一方の電極に導き、正孔をもう一方の電極に導けば、電気が発生します。

ペロブスカイト太陽電池はペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いた新しいタイプの太陽電池であり、発見当初、変換効率は4%程度でしたが、ほんの数年で15%まで上がり、「シリコン系太陽電池」や「化合物系太陽電池」にも匹敵する高い変換効率を達成しています。
ペロブスカイト太陽光電池最大の魅力は、塗布するだけで作成できることです。そのため、既存の太陽光電池よりも低価格で、軽量、設置場所も自由に選ぶことができます。

今後、さらに効率は上がると想定されており、普及率としては、まだまだ研究段階だと言えますが、物理的にも経済的にも汎用性が高く将来性も期待できるため、実用化できれば太陽光発電の目玉となるでしょう。

薄膜の形成と塗布プロセス

ペロブスカイト太陽電池を作るための薄膜形成と塗布プロセスは以下の通りです。

①原料を含む溶液を、金属酸化物(チタニアやアルミナ)の膜上に塗布してペロブスカイト結晶薄膜を形成
(この薄膜は波長800nmまでの可視光を吸収できる性能を持つ)
②その上層に、プラスの電気(正孔)が集まる有機の正孔輸送材料を接合して薄膜セルを作製

ペロブスカイト太陽電池の作製は容易であることから各所で研究が開始され、変換効率が急速に向上しました。

宮坂教授らはこれまでのALCAの研究で、材料や結晶構造、プロセスを最適化することで、ペロブスカイト太陽電池として最高クラスの変換効率(21.6%)と1.15V以上の高い電圧出力を実現しています。

ペロブスカイト太陽電池のメリット

ペロブスカイト太陽電池のメリットは以下の通りです。

・既存の太陽電池に積層することでエネルギー変換効率が向上する
・発見当初、変換効率は4%程度だったが、ほんの数年で15%まで上がった
・光の吸収能力にすぐれ、500nm(ナノメートル)の厚みでほぼ100%の光が吸収できる
・シリコン系では必要だった高温加熱や高真空プロセスがいらない
・基板の上で多孔質の酸化チタンに溶液を塗布し乾かすだけで作製できる
・折り曲げ加工が可能
・シリコン型太陽光パネルの10分の1程度の重さ
・シリコン系太陽電池に比べて非常に安価に製作できる
・バッテリーカーのボディーに塗り太陽光で充電し走行することが可能
・PCなどに塗って室内光でIT機器を使用できる
・1ボルト程度の高い開放電圧が得られる

塗るだけで発電が可能なペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト太陽電池は薄くて軽いシート状のもので、曲げても壊れないという特徴を持つ太陽電池です。

そのため、建物の影や曲面などにも対応可能であり、車体など今まで太陽光発電の設置ができなかった場所にでも貼り付ける事で発電可能となります。
高温加熱や高真空の製造過程を使用しないので、製造コストを安価に抑える事ができます。

また、ガラス板の上に多孔質の酸化チタンに溶液を塗布して乾かすだけで簡単に完成するため、高度な技術がなくても太陽光電池を設置できます。

ペロブスカイト太陽電池のデメリット

ペロブスカイト太陽電池のデメリットは以下の通りです。

・開発間もないため実用化には課題がある
・何回か実験を重ねると劣化が非常に速く、耐久性に大きな問題がある
・電圧のかけ方によって変換効率が変動するという問題がある
(電圧掃引方向や掃引回数によって電圧曲線にズレができてしまう現象をヒステリシス現象と呼び、変換効率測定および、安定性の障害になります)

曲げられる透明フィルムの可能性

ペロブスカイト太陽電池を製造する時の温度はシリコン系に比べてプラスチックを痛めない範囲程度に低くすることができますので、プラスチックフィルムタイプの太陽光電池の製造を可能にします。

シリコン系太陽電池は、薄くすると太陽光エネルギーを吸収できなくなるため、変換効率が大幅に低下します。しかし、ペロブスカイト太陽電池は太陽光の吸収係数が大きいため、高い変換効率を維持したフィルムタイプの太陽電池を実現可能にします。プラスチックフィルムで作る高効率ペロブスカイト太陽電池は、100回以上の曲げ試験でも性能は安定したままでした。

また、発電効率をさらに高め、実用に耐えられる耐久性も備えられれば、加工しやすい透明フィルムの太陽電池も開発可能です。屋外用や屋内用、携帯用など、幅広い用途で使うことができる太陽光電池が誕生するかもしれません。

たとえば、透明フィルムのペロブスカイト太陽電池をビニールハウスに塗布し、農作物を育てるのに必要な光を透過させながら、同時に農地で必要な電力を生成するようなことも可能になり、ソーラーシェアリングへと発展させることができます。更に太陽光電池で作り出した電力を蓄電池に貯めることで、農作に必要なエネルギーを自家発電自家消費することもできるでしょう。

今後の課題

ペロブスカイト太陽電池と別種の太陽電池とを組み合わせたタンデム構成にすることで、シリコン系太陽電池(変換効率25%以下)を大幅に上回る変換効率30%以上の太陽電池を作ることができるでしょう。

タンデム構成とは、複数の電池を直列につなぎ、それぞれの電池に決められた処理を分担させることで、一連の処理を別々の電池が行うように構成されたシステムのことです。

また、30年以上の使用に耐えられる耐久性、人体へ悪影響のある鉛を使わないPbフリーペロブスカイト太陽電池の開発も目指しています。

課題を乗り越えることにより、ペロブスカイト太陽電池はあらゆる場所に設置でき、少ない面積で大きな電力が得られる理想的な太陽電池となり、CO2低減に貢献できるでしょう。

寿命や耐久性の向上

2021年4月、金沢大学の研究グループはイオン液体を少量添加するだけでペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化を実現する方法を開発したと発表しました。

ペロブスカイトを塗布で製膜する際、事前にイオン液体をペロブスカイト前駆体溶液に少量添加することで、膜が数十nmサイズのナノ粒子膜化する技術に着目しました。この技術は6年前に同研究グループが開発したもので、今回はこの技術を高性能なトリプルカチオン型ペロブスカイト太陽電池作製に応用しました。

具体的な流れは以下の通りです。

①イオン液体添加によりナノ粒子膜化したペロブスカイト膜を作製
②その上にトリプルカチオン型ペロブスカイトを製膜
③ナノ粒子を成長核としてトリプルカチオン型ペロブスカイトが欠陥の少ない高品質な膜に成長することを発見

高品質化により分かったことは以下の通りです。

・太陽電池のエネルギー変換効率が19.4%を達成
・電流値である短絡電流密度も25.3 mAcm-2と大きな値を示した

また、この技術で製膜した膜の欠陥が少ないため、劣化の原因となる大気中の水などの膜に入りこみを抑えることができ、太陽電池の長寿命化にも成功しました。
従来の手法で作製したペロブスカイト太陽電池は2,500時間で発電しなくなったのに対し、イオン液体を添加したペロブスカイト太陽電池は6,000時間を超えても初期性能の8割を保持し続けることができました。

金沢大学は今後、今回の手法についての研究開発を継続し、ペロブスカイト太陽電池の実用化、高性能化、低コスト化を目指しています。

まとめ

ペロブスカイト太陽電池と蓄電池について解説してきました。以下、まとめとなります。

・ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイト半導体を使用した、圧倒的なスピードで変換効率が進化している日本発の太陽電池
・ペロブスカイト太陽電池は塗布することにより、低コストで場所を選ばず設置することができ、蓄電池と組み合わせればより高い生産性を生み出すことができる
・今後の課題として、30年以上の使用に耐えられる耐久性、人体へ悪影響のある鉛を使わないPbフリーペロブスカイト太陽電池の開発が挙げられる

ペロブスカイト太陽電池はまだ実用化はされていませんが、一般家庭や農作業に広がっていけば、太陽光発電による再生可能エネルギーは一気に普及するかもしれません。
課題を乗り越えることにより、ペロブスカイト太陽電池はあらゆる場所に設置でき、少ない面積で大きな電力が得られる理想的な太陽電池となり、CO2低減にも貢献できる地球環境に優しい電池になるでしょう。

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蓄電池コンシェルジュ代表
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