蓄電池+太陽光発電+燃料電池で水素社会は加速化する? そのために必要不可欠なのはプラチナ!

日本政府やEUは2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロとする目標を設定し、中国は2060年を目標に脱化石燃料社会である実質排出ゼロを掲げています。脱炭素社会を実現するための技術として、燃料電池や蓄電池の普及拡大が期待されています。その一方で、燃料電池などにはプラチナやリチウムなどの希少な金属が使われており、こうした金属の利用が拡大すれば、需給がひっ迫するだけではなく、資源開発による環境破壊も懸念されています。プラチナはクリーンで環境に優しい水素社会を目指すために必要不可欠なものです。今回は蓄電池とプラチナについて解説します。

プラチナの需要が下落した理由

プラチナはディーゼル車の排ガス触媒に欠かせない素材として知られていますが、2015年のフォルクスワーゲンの排ガス不正問題以降、ディーゼルエンジン車の人気が失墜し、ディーゼルからガソリン車へのシフトが進みました。これにより、ディーゼルエンジン車の触媒であるプラチナからガソリンエンジン車の触媒であるパラジウムへの需要シフトに繋がりました。その結果、プラチナが下落基調となる中、パラジウムが暴騰する結果になりました。

プラチナはこれからの水素社会に必要な存在

プラチナの長期テーマとして注目されるのが「水素社会」です。プラチナによる水素社会がどのように形として現れているか紹介します。

中国が2030年には燃料電池車100万台生産する計画

1つ目が「中国が2030年には燃料電池車100万台生産する計画」です。

燃料電池車(FCV車)は水素の力を利用して電力を生み出し、モーターを働かせて動く仕組みになっています。FCVはプラチナを触媒として、水素と酸素を合わせて電気と水を発生させ、自己発電します。そのため、必要なのは燃料の水素であり、充電する必要がありません。つまり、発電所を積んだ車といえます。

また、有害物質を排出しないため、地球環境に優しく、静粛性にも優れています。
水素の補給方法は水素ステーションから直接水素を充填する「直接水素形」と、水素以外の燃料を補給して車の中で水素を製造する「車上改質形」があります。

水素ステーションの数が少ない事と、FCV水素自動車の製造においてプラチナが多量に使用されているため、車体自体が高額になるというデメリットもあります。しかし、環境面を考えると、二酸化炭素を排出しないクリーンなFCVはEVと同じく浸透していくかもしれません。

中国は自動車大国であり、世界の自動車生産の3割を占めています。その中国がプラチナを触媒とした燃料電池車の生産数を2030年には年間100万台に増やす「New Energy Vehicle」計画を発表しました。その計画の中では、水素を補給する場所として、全土で水素ステーションを構築すると伝えられています。

水電解による水素製造の電極にもプラチナが使用されている

2つ目が「水電解による水素製造の電極にもプラチナが使用されている」ことです。

プラチナは電解の過程で触媒として効率的な化学反応を起こし、商業規模に適する生産量を得るために重要な役割を担っています。プラチナを利用して水素を製造し、化石燃料に代わるエネルギーとして使用することで、脱化石燃料社会だけでなくクリーンで地球に優しい水素社会を目指すことができるでしょう。EUは2050年の世界エネルギー需要の24%は水素が担う可能性があると予測し、水素エネルギー社会実現のため50兆円規模の金額を次世代への歩みとして投じました。

EUの水素重視戦略

2020年7月8日、EUは「気候変動に対応する水素重視戦略」宣言を発表しました。これは2030年までにメインエネルギーを水素に切り替えるというものです。自動車を始め、様々な産業で水素エネルギーに投資して、環境対策と経済成長両立を目指すこの戦略は、うまくいけばリチウムイオン電池においてリードしているアジアやアメリカに勝つことができるかもしれません。目標に向かって進んでいけば、ガソリンで動く車からリチウムイオン電池を利用したEV(電気自動車)の時代が来ます。水素エネルギーに力を入れることで、EVと並列して水素で動く車、燃料電池車(FCV)を開発していけば、環境対策と経済成長の両立を目指すことができるでしょう。そのため、プラチナを必要とする欧州の水素重視戦略はすでにスタートしています。

プラチナはグリーンイノベーションの中核を担っている

水素を燃料とする燃料電池は、水素と酸素の化学反応で電気と水を発生させる仕組みになっています。この化学反応を促すための触媒にプラチナが使われています。プラチナは金と並んで性質が変化しにくく、ハイテク製品の製造に不可欠なレアメタルの一つです。他の物質の化学反応を促進するので、自動車の排ガス浄化や燃料電池に使われています。

プラチナ触媒なしの場合、化学反応を促すのに高温、高圧が必要となってしまい、自動車への搭載は難しくなります。しかし、プラチナ触媒を使うことで、低温度で化学反応を促すことができるようになります。

プラチナは高価で希少な貴金属です。1年間の生産量は世界で約205トン、地球上の埋蔵量はわずか7万1,210トンといわれています。南アフリカなど産出国が限られており、大変高価なものです。プラチナの使用量を自動車1台の燃料電池に必要な量の1/10にまで押さえて、同じ性能を発揮できる技術の開発が目指されています。
燃料電池、蓄電池の技術はエネルギーと環境問題に対処できる有力な分野であり、グリーンイノベーションの中核を担っているといえるでしょう。

プラチナ価格が高くなるほど需要は減っていく

プラチナは非常に効果で希少な貴金属です。生産量も少なく、生産地も偏っています。FCVが普及すれば、パラジウムのようにプラチナも急騰する可能性もあります。しかし、いくらFCVを普及させたくてもプラチナ価格が上昇していくと自動車の値段も上がって行ってしまいます。そのため、触媒に使うプラチナの量を減らす工夫や代替品の開発が進んでいます。

プラチナは水素社会実現の鍵

FCVを一台作るのに、かつてプラチナは約100g必要でした。プラチナだけでおよそ40~50万円の原価となっていましたが、現在では改良が進み1台あたりで約40gになりました。しかし、水素社会が到来してしまうと、プラチナは圧倒的に足りません。

FCV1台で40gのプラチナを使うということは、1,000万台のFCVで400トンのプラチナが必要です。しかし、プラチナの年間供給量はわずか200~250トンです。世界の自動車生産台数を全てFCVに置き換えることになればプラチナの需給がひっ迫し、高騰する可能性があり、価格が何倍にもなる可能性があります。

プラチナの使用量を減らすことができなければ、EUの目指す水素社会到来は難しいです。水素普及のためにわずか1gの使用で済む効率の良いプラチナ触媒の開発が、2030年に向けて進められているそうです。NEDO(持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じてイノベーションを創出する国立研究開発法人)の目標によると、2030年には日本国内のFCVの普及台数が80万台になるとされています。中国でも2030年に100万台の燃料電池車の導入を計画しています。
プラチナは水素エネルギーが実現できるかどうかの鍵となるため、開発が期待されています。

燃料電池と蓄電池の組み合わせ

燃料電池は発電できますが、蓄電池のように電気を貯蓄することはできません。そのため、燃料電池と蓄電池を組み合わせた開発が日本で進んでいます。そのうちの2つを紹介します。

ハイブリッドシステムを搭載した試験車両を連携して開発

1つ目は「ハイブリッドシステムを搭載した試験車両を連携開発」です。

2020年10月6日、東日本旅客鉄道(JR東日本)、日立製作所、トヨタ自動車は、水素を燃料とする燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステム搭載の試験車両を連携して開発することに合意した事を発表しました。これにより、鉄道の環境優位性は向上し、サスティナブルな社会を目指しています。

互いが持つ鉄道技術と自動車技術を融合・連携させ、自動車で実用化されている燃料電池を鉄道へ応用することで、自動車より大きな鉄道車両を駆動させるための高出力な制御を目指したハイブリッド試験車両を開発しています。

「変革を起こす水素燃料電池と主回路用蓄電池ハイブリッドの先進鉄道車両」をイメージし、愛称名は「HYBARI(ひばり/HYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehicle for Innovation)」と名付けられました。

燃料電池装置には水素タンクに充填された水素が供給され、空気中の酸素との化学反応により発電します。主回路用蓄電池は、燃料電池装置からの電力とブレーキ時の回生電力を充電するため、燃料電池装置と主回路用蓄電池の両方からの電力を主電動機に供給し、車輪を動かす制御を行います。

パナソニックが太陽光+燃料電池+蓄電池で工場を運用

2つ目は「パナソニックが太陽光+燃料電池+蓄電池で工場を運用」です。
2021年5月24日、パナソニックは事業活動で消費するエネルギーを「100%再生可能エネルギー」で賄う「RE100化ソリューション」を構築し、2022年春から実証を始めると発表しました。

出力500kWの純水素型燃料電池と出力約570kWの太陽光パネルを組み合わせた自家発電設備によるエネルギーで、燃料電池工場の製造部門が使用する全ての電力を賄います。燃料電池工場のピーク電力は約680kW、製造部門の年間使用電力量は約2.7GWhになります。使用電力から余った電力は容量約1.1MWhのリチウムイオン蓄電池に蓄電します。「3電池」の連携による最適な電力需給運用に関して技術開発して検証していきます。

3電池の組み合わせにより、太陽光発電の天候からの影響という課題を補完し、事業活動に必要な電力を安定的、高効率的に供給し、更に使用量の少ない工場非稼働日の発電電力も有効活用できるという、蓄電池による適切なエネルギー管理が可能となります。

将来的には再生エネルギー由来のグリーン水素によるRE100を目指し、自家発電により事業活動に必要な再生エネルギー電力を賄う「RE100ソリューション」の事業化を目指します。

まとめ

蓄電池とプラチナについて解説しました。以下、まとめになります。

・プラチナは燃料電池の触媒になる
・プラチナは希少金属ですので、代替開発か、少ないプラチナでの開発が水素社会のカギとなる
・太陽光発電+燃料電池+蓄電池は水素社会を加速化させる

プラチナは高価で希少な貴金属ですが、クリーンな水素社会を目指すのに必要不可欠な存在です。燃料電池と太陽光パネルを組み合わせた自家発電設備によるエネルギーを蓄電池と組み合わせれば、地球環境に非常に優しい再生エネルギーを生み出すことができるでしょう。蓄電池や太陽光発電と組み合わせて開発されていく水素社会に注目です。

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蓄電池コンシェルジュは、蓄電池を購入しようとお考えの方々に、蓄電池を活かした暮らしをするための上質なコンシェルジュサービスをご提供しております。再生可能エネルギーに理解のある方々にご利用頂くことが「脱炭素社会」実現へのカギとなります。蓄電池コンシェルジュは、文化的、社会的資産を後世に引き継ぎ、社会的責任としての取組みのみならず、日本の人口減少と地球温暖化の危機を救うためのお手伝いをさせて頂いております。

蓄電池コンシェルジュは皆さまの人生をより豊かにする蓄電池をご提案させて頂きます。皆さまのご利用を心よりお待ち申し上げております。

蓄電池コンシェルジュ代表
根上 幸久

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