蓄電池は正極と負極の材料によって種類が異なる!それぞれを徹底解説してみた

私達が普段手軽に使っているマンガン乾電池、アルカリ乾電池、ボタン電池などは一次電池と呼ばれます。
蓄電池は二次電池であり、電力を充電して蓄え、繰り返し使うことができる電池システムです。
自動車のバッテリーやパソコン、携帯電話などのモバイル機器の電源など、蓄電池は私達の生活にとても身近な欠かせないものとして、様々な用途・分野で利用されています。
蓄電池は電池の正極・負極に用いる素材によって分ける事が出来ます。
素材によって電圧やエネルギー密度が異なり、環境や用途を踏まえ、適切な製品を選ぶことが重要です。
今回は非常時用電源として注目が高まっている蓄電池の種類や特徴について解説していきたいと思います。

家庭用蓄電池とは

蓄電池は家庭用蓄電池と産業用蓄電池に分けられます。
家庭用蓄電池とは住宅用太陽発電システム、または一般住宅に使用する充電可能な電池のことです。蓄電容量はメーカーによって異なりますが、1kWhから16kWhぐらいの容量で販売されています。
元々、住宅用太陽光発電システムに蓄電システムは組み込まれていませんでした。しかし、東日本大震災以降、蓄電池と太陽光発電を組み合わせれば、災害による長期間の停電でも電気のある生活ができる事から一般家庭にも注目され始めました。

蓄電池は自動車用バッテリーのように単体で販売されているのではなく、本体価格に加えて制御システムや電流を直流から交流に変換するパワーコンディショナが含まれ、太陽光発電システムと一緒に導入する場合もあります。そのため、家庭用蓄電池を導入する場合、設置工事が必要となってきます。
つまり自動車用バッテリーなどのように、蓄電池単体で販売されているのではなく、制御システムや太陽光発電システムとの連携に関する機器も含まれています。

家庭用蓄電池は10万円から100万円単位で、定置型と移動式に分けられます。

定置型蓄電池は一度固定したら動かすことができない据え置き型です。屋外に設置される場合や容量が大きいものが多いです。太陽光発電システムと連携させる場合は定置型になります。
設置工事には本体だけでなく電気系統の施工費用などもかかります。
サイズも大きく、設置するのに一定のスペースが必要ですので、導入前に業者としっかり話し合いましょう。

移動式蓄電池は持ち運びや移動が可能な小型家庭用蓄電池です。アウトドアや車中泊をするのに適しています。
小型ですので、設置スペースも小さく工事不要で、低価格です。しかし、蓄電用量が小さなものが多く、非常用電源として大型電気機器の電力を長時間カバーするのは難しいです。

蓄電池の種類と特徴

家庭用蓄電池に使われている多くはリチウムイオン電池です。蓄電池は電池の正極・負極に用いる素材によって分ける事が出来ます。それぞれどんな種類があってどんな特徴があるのか見てみましょう。

鉛蓄電池

プランテによって1859年に発明された鉛蓄電池は最も古い蓄電池システムです。正極活性物に二酸化鉛(PbO2)、負極活性物に鉛(Pb)、電解液に希硫酸(H2SO2)を用いています。

他の蓄電池と比べて電力容量あたりの価格が安く、安定した範囲で放電することができ、放っておくと内臓電力が減少し、メモリー効果もありません。

しかし、繰り返し充電することによって負極の金属に硫酸鉛の硬い結晶が発生しやすくなり、サイクル回数の増加に伴い性能が低下してしまいます。電解液として硫酸を用いているので破損などが起こると周囲への危険性があります。さらに寒冷地では、硫酸が凍結して破損する恐れもあるため、使用時には注意が必要です。

鉛蓄電池の用途は幅広く、自動車のバッテリー、フォークリフト・ゴルフカートといった電動車用主電源としても用いられており、安価で使用実績が多く、信頼性に優れています。

鉛蓄電池は極板の種類や構造によって分類することができます。

●極板の種類による区分
・クラッド式
長期の使用中でも有害な不純物を溶出する恐れがなく、長寿命が期待できます。ガラス繊維をチューブ状に編み上げて焼き固めたものの中に極板活物質を充填したもので構成されています。

衝撃や振動に非常に強く、バッテリーフォークリフトの他、通信用・機器操作用・バックアップ電源として利用されています。

・ペースト式
クラッド式ほどの寿命は期待できませんが、高率放電用途に適しており、格子体と呼ばれる極板の骨組みにペースト状にした活物質を塗り込んで極板にしたものです。

自動車用バッテリーの他、無停電電源装置や非常用電源としても利用されています。

●極板の構造上の区分
・ベント形鉛蓄電池
鉛蓄電池発明当時から存在していた構造であり、液式電池とも呼ばれています。
充電中に起こる水の電気分解反応や自然蒸発によって電解液中の水分が失われるため、適宜、精製水を補給する必要があります。

・制御弁式鉛蓄電池
1980年代半ばより登場し、セパレータ(隔離板)に微細ガラスマットを用い、電解液をそのガラスマットに保持する方式をとった構造のものです。横置きしても電解液がこぼれない仕組みであり、ベント形鉛蓄電池の横倒しに出来ないという欠点をクリアしています。
充電中に発生する水素ガスや酸素ガスを化学反応によって元の水に還元して電解液中に戻しているため、精製水の補充が不要となっているため、維持運用が容易になっています。

ニカド電池

1899年にスウェーデンのユングナーが発明した蓄電池であり、正極活物質にオキシ水酸化ニッケル、負極活物質にカドミウムを用いるためニッケル・カドミウム充電池と言われ、別名ニカド電池と呼ばれています。

メリットとして安定した電力を連続で放電できること、最大500回ほどの充電に耐えられる頑丈さ、優れた負荷特性が挙げられます。
デメリットは放置しているだけで内臓電力が減少し、電力が残っている状態で充電すると充電容量そのものが減少してしまう点です。

現在では、コードレス電話、シェーバー、非常照明などに使用されていますが、人体に影響を与えるカドミウムを使用しているため、近年では減りつつある蓄電池でもあります。

ニッケル水素電池

ニッケル水素電池は、正極活物質にオキシ水酸化ニッケル、負極活物質に水素吸蔵合金、電解液に水酸化カリウムのアルカリ水溶液を用いている蓄電池です。ニカド電池のデメリットを改善しており、カドミウム不使用で安全に利用可能であり、充電・放電の速度と電力が向上しています。
ただし放っておくと内臓電力が減少するメモリー効果の欠点は残っています。

主にエネループをはじめとする乾電池二次電池やハイブリッドカーの動力源に使用されています。

現在では、急速充放電可能という強みを活かし、鉄道システムやモノレールシステムの地上蓄電設備(BPS)としても多く採用されており、平常時のピークカットや停電時の非常走行などの運用方法ができるようになっています。

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池は、正極活物質にリチウム含有金属酸化物、負極活物質にはグラファイトなどの炭素材料、そして、電解液として有機電解液を用いた蓄電池です。

リチウムイオン電池は、ニカドやニッケル水素のデメリットであるメモリー効果がなく、エネルギー密度と充放電エネルギー効率が高く、残存容量や充電状態が監視しやすい特徴があります。小型で軽量、高電圧を供給できるので、蓄電池の中で最も活発に普及や技術開発の取り組みが推進されていると言えるでしょう。ただし、安定した放電のために安全性の確保や電圧を管理する必要があります。

リチウムイオン電池は、一般住宅や小規模店舗、オフィスに多く導入されている蓄電池です。

NAS 電池

NAS電池は正極活物質に硫黄、負極活物質にナトリウム、電解質にはβ‐アルミナを用いている大規模電力貯蔵システムです。
世界で唯一、日本ガイシ株式会社という蓄電池メーカーが開発、生産、量産をしている蓄電池として知られています。東京電力と共同で開発されました。

蓄電池システムの中で最も大きい、メガワット級の電力を貯蔵できるシステムです。リチウムイオン電池とも変わらない程高い密度のエネルギーを大容量で貯蔵できる上、鉛電池よりも低価格・長寿命であり、サイズも約3分の1であり、長期間の安定した電力供給が可能です。

しかし、NAS電池はナトリウムと硫黄を使用するため、日々の動作確認や保守作業が必要不可欠となります。

現在NAS電池は主に工場といった施設のバックアップ用電源として用いられていますが、再生可能エネルギーを本格的に推奨するにあたって、大容量向き蓄電池として重要な要素となっていくかもしれません。

全個体電池

全個体電池とは次世代型の蓄電池であり、現在トヨタ自動車が開発中の新型電池です。
電解液を固体にすることで電解液の可燃性を抑え、高速充電と冷却装置の省略化によって小型化し、耐熱性に優れているので、リチウムイオン電池の応用であり、弱点を克服している蓄電池と言えます。

二次電池以外の電池

一般的な蓄電池以外に、再生エネルギーを燃料としている電池を2つ紹介します。

燃料電池

燃料電池は環境に対して影響のない水素と酸素を利用しており、次世代の発電システムとして注目されています。
一度で使い切りでもなく、なくなると充電しないといけないわけでもなく、燃料となる水素と酸素を供給し続けることで、電力を作ることができる理想的な発電システムです。

水の電気分解を利用して発電する仕組み、排熱を利用することで既存の発電システムとはくらべものにならない電力を生み出すことができます。しかも、騒音や振動を抑えられ、環境を汚染する物質も生み出しません。

レドックスフロー電池

レドックスフロー電池とは、太陽光や風力など、再生可能エネルギーの利用拡大のために必要な系統の安定化技術として期待されている新技術です。イオンの酸化還元反応を用いて充放電を行います。

電極や電解液がほとんど劣化しないので長寿命であり、材料に発火性のものがないので常温運転ができ、安全性が高いです。20年のシステム耐久性を持っており、サイクル数は無限です。電力会社や風力・太陽光発電事業者、電力小売事業者や電力需要家など、多くの人々から需要があります。

太陽光発電と蓄電池

実際に工場、商業施設、オフィスビル、公共施設など幅広い分野で非常用の電源や節電のためのシステムとして利用されているのが、太陽光発電と蓄電池の組み合わせでしょう。

蓄電池が一般家庭に普及し始めたのは1970年代以降で、太陽光発電設備などに用いられるタイプは、当初工場など大規模な設備に使用する産業用蓄電池が主流でした。

その後も開発と改良を繰り返し、家庭用蓄電池の実用化は1990年代に行われ、現在では多くの住宅用太陽光発電に組み込まれています。

太陽光発電と蓄電池の組み合わせは、屋根や屋上、庭などに設置したソーラーパネルで太陽光を電力へと変換して、それを一時的に蓄電池に貯蔵する仕組みになっています。リチウムイオン電池が広く使われており、管理設備などと併せれば、充電状況、電力の使用状況などを数値や図表で管理できます。

この太陽光蓄電池システムで貯めた電気は電力会社に売ることができ、日々の生活コストを下げるのにも役立ちますが、2019年から固定価格買取制度の買取期間10年間が満了を迎えてきています。

太陽光発電で日中、自家発電・自家消費し、余剰電力を蓄電池に蓄え、夕方から明け方に蓄えた電力を使い、電力会社から極力電気を買わないようにします。更に余剰した電力を売電することもできるので、賢く節約・節電することができます。

また、太陽光発電は雨や曇りの日は発電ができません。蓄電池と組み合わせれば、太陽光発電ができなくても、蓄電池に溜めておいた電気を使うことができます。これは災害時の非常用電源として使う時に、天候によって電力が使えないというリスクを回避するためです。

国は再生エネルギーを推奨しており、2050年までに大幅なCO2削減を掲げています。そのため、国や地方自治体は太陽光発電と蓄電池の普及を進めるため補助金を出しています。この補助金により、産業用だけでなく一般家庭にも取り付けが増えつつあります。

まとめ

蓄電池の種類や特徴について解説してきました。以下まとめです。

・蓄電池は正極・負極に用いる素材によって分類できる
・家庭用蓄電池の多くにはリチウムイオン電池が使われている
・太陽光発電と蓄電池の組み合わせは非常時電源だけでなく節電にも役立つ

蓄電池にはそれぞれ良い面があり、悪い面もあります。リチウムイオン電池も広く浸透していますが、温度の低い場所では性能が落ち、高すぎると破裂する可能性もあります。それぞれの蓄電池の特徴を知ることで、どの蓄電池がどこに使われているのか知ることができます。更に太陽光発電と蓄電池の組み合わせは災害時の非常用電源としての備えだけでなく、自家発電・自家消費による節電・節約や、これからの社会で求められる環境問題を考えた上で導入を考えてみてもいいかもしれませんね。補助金などの制度を使って、ぜひ導入を検討してみてください。

最新情報をチェックしよう!
>蓄電池の未来をデザインするサービス

蓄電池の未来をデザインするサービス

蓄電池コンシェルジュは、蓄電池を購入しようとお考えの方々に、蓄電池を活かした暮らしをするための上質なコンシェルジュサービスをご提供しております。再生可能エネルギーに理解のある方々にご利用頂くことが「脱炭素社会」実現へのカギとなります。蓄電池コンシェルジュは、文化的、社会的資産を後世に引き継ぎ、社会的責任としての取組みのみならず、日本の人口減少と地球温暖化の危機を救うためのお手伝いをさせて頂いております。

蓄電池コンシェルジュは皆さまの人生をより豊かにする蓄電池をご提案させて頂きます。皆さまのご利用を心よりお待ち申し上げております。

蓄電池コンシェルジュ代表
根上 幸久

CTR IMG