従来、蓄電池は産業用のバックアップ電源として活躍してきました。しかし、自然災害時の停電対策として、一般住宅にも普及が広がっていきました。固定価格買取制度(FIT)によって普及していくにつれ、太陽光発電設備との組み合わせの良さや、電気代が安くなる深夜料金を利用した賢い蓄電池の使い方など、電気代が大幅に削減できる事も注目されていきました。卒FIT後は太陽光発電と組み合わせる自家消費目的で導入をしている家庭が増えつつあります。
家庭用蓄電池販売に参入する企業は増加しており、どの販売店に依頼をすれば安心なのか、導入業者の選び方は慎重に行わなければいけません。何故なら、蓄電池導入には設置工事費用を含め80~180万円が相場といわれており、それなりに高額な導入費用がかかるからです。また、導入後も10年以上使い続けるため、安心できる業者でないとその後の不安材料になってしまいます。最近は少し悪質な訪問販売も増えてきており、断り切れず契約をしてしまったという人も少なくありません。そこで今回は蓄電池導入の際に業者選びにおいて押さえておきたいポイントと訪問販売での対処法を紹介していきます。
業者選びのポイント
蓄電池は普及していくにつれて、本体価格が発売当初よりも下がってきており導入しやすくなっています。しかし、需要が高くなればなるほど怪しい企業の参入も増えてきます。
・必要とするスペックが足りなくて使い勝手が悪い
・同じ蓄電池が他の店で数十万円以上安く販売されていた
・蓄電池に問題が発生しても何の対応もしてくれない
何も考えずに蓄電池を導入した場合、上記のような失敗をしてしまいがちです。そうならないためにはしっかりと安心して任せられる業者を選びましょう。そのポイントは6つです。
①自社施工を行っている
②蓄電池の説明がしっかりしている
③蓄電池取り扱いメーカーが多い
④ホームページなどで施工実績を調べておく
⑤アフターフォローは充実しているか
⑥相見積もりを断る業者には要注意
①自社施工を行っている
太陽光発電や蓄電池などの住宅設備を販売する企業は2つに分かれます。
・販売から施工まで全て自社で行う企業(自社一貫型)
・販売だけを行い工事は別の会社に依頼している企業(外注施工)
自社一貫型に依頼する方が、別の施工会社を通さないため中間マージンがかからず、施工費用が安くなるというメリットがあります。また、蓄電池の施工に慣れている事、自社一貫型である事から、強い責任感を持って施行をしてくれるかもしれないという安心感が生まれます。そのため、外注施工よりも自社一貫型の方が安心して任せられるでしょう。
②蓄電池の説明がしっかりしている
家庭用蓄電池は電気を蓄えておき、いざという時に非常用に使う事ができるという事は理解できても、その他の詳細な部分に関してはよくわからないという人は多いと思います。疑問点があれば購入前に業者に質問をし、質問への回答が不明確・不十分であったり、必要な情報を教えてくれない業者は要注意です。提供された資料の情報量が分かりやすく、詳細まで説明されていれば、ある程度安心して任せられる業者だと考えてもいいでしょう。
③蓄電池取り扱いメーカーが多い
蓄電池は家庭によって導入する目的や条件が異なるため、最適な蓄電池は各家庭ごとに異なります。そのため、取り扱っている蓄電池のメーカーが非常に少なく、●●メーカーの蓄電池が業界内で飛びぬけて性能が良いと説明してくる業者には要注意です。
取り扱いメーカーが少ない販売店の場合、自分の希望に沿った蓄電池や提案をしてもらうことが難しいため、言葉巧みに進められてしまうと不適応な蓄電池を設置する事になるかもしれません。種類がたくさんありすぎてどれがいいのかわからない場合は、自分が必要とする電気量と要望を明確にしておき、きちんと伝えれば良い業者は数多くあるメーカーの中から必要なスペックを持った蓄電池に絞り込んでくれるでしょう。そのため、複数のメーカーを取り扱っている販売店・業者に依頼するといいでしょう。
④ホームページなどで施工実績を調べておく
施工実績が多いほど、施工技術が高い業者と言えます。そのため、業者のホームページなどで豊富な施工実績があるかどうか事前に確認しておきましょう。
⑤アフターフォローは充実しているか
蓄電池は定期的なメンテナンスなどは必要ありませんが、使用している内に故障する可能性もあるため、付いてくる保証やアフターフォローはどんなものかしっかりと比較しておくのがいいでしょう。
たとえば、アフターフォローの内容は薄いが導入コストが他より安い場合。蓄電池は導入後、数十年に渡って利用する設備です。導入コストの安さだけで選ぶと、点検や修理でコストがかさんでしまい、結果的に高くなってしまうかもしれません。地震や台風など大規模災害が起こって数年で買い替えが必要になってしまった場合、保証やアフターフォローがなければ大損です。そのようなリスクを回避するため、導入費用の安さだけを注目せずに10年後、20年後のコストを考え、アフターフォローが充実なものを選ぶのがいいでしょう。
⑥相見積もりを断る業者には要注意
蓄電池を導入する場合、導入コストを少しでも安くしたいと考えてしまいます。しかし、見積内容が相場を超えて安かったり(高かったり)するのは何らかの理由があります。たとえば、アフターフォローの内容が薄いため安い、自然災害に対する保証が付いているため高いなど。どの業者から蓄電池を購入すれば総合的にお得かを判断するため、複数社に見積もりを出してもらうことを相見積もりと言います。蓄電池は高く、長い間使い続ける商品であるため、複数社の見積もりをしっかりと比較し、納得のいく形で選びましょう。
購入を促すために「今購入を決めて頂けたら●万円値下げしますよ」という値引き販売は要注意です。他の業者にも話を聞いてみたいから相見積もりをしたいと言っているのに、強引に契約を迫ってくる業者は基本的に信用しない方がよいでしょう。
訪問販売業者に騙されない対処法
販売店での業者選びは上記のポイントを押さえたらいいのですが、訪問販売の場合はどうすればいいのでしょうか。玄関に居座られ、長時間説得されたら蓄電池を導入するつもりがなかったのに気づけばハンコを押していた、なんて事があるかもしれません。
訪問販売で騙されないための対処法は4つです。
①居留守を使う
②その日に商品を買わない
③無料設置という業者には身構えよう
④資料や見積書を持って帰る業者は疑おう
①居留守を使う
最初から断れない人は居留守を使いましょう。特に商品の説明や内容を十分理解できていないのに、こんなに長く一生懸命説明してくれたのに断ったらどうしようと考える傾向が強い人は居留守がオススメです。
もしドアを開けてしまって説明を受ける流れになった場合は「家族を呼んできます」と言って、断ってくれそうな家族と一緒に話を聞いてみましょう。全ての訪問業者が騙してくるわけではないので、本当に自分たちに必要かどうかを検討してから、いらないと思ったら断りましょう。また、会社の顔である名刺を最初に渡してこない業者は最初から怪しいと疑っていいでしょう。
②その日に商品を買わない
どんなに相手の話が上手で、商品が良いものだと思っても当日に契約すると大損する可能性が高いです。「大事な話ですので家族とよく話し合ってから考えます」と一呼吸おいて、インターネットなどで商品や業者について情報収集し、口コミを見て詐欺ではないかを確認しましょう。そして本当に蓄電池を導入したいと思ったら、複数業者から見積もりを取るなど、冷静な行動を行うのがオススメです。
③無料設置という業者には身構えよう
蓄電池は高額なので、工事費が無料だと設置費用を抑える事ができ、お得に蓄電池を導入する事ができます。しかし、「工事費無料で設置します」というのは工事費が無料になるわけではないので要注意です。工事費は売電収入によるローン返済という仕組みが大半であり、売電収入は一定ではないため、返済が不安定になるというリスクが発生します。
そのため、工事費が無料だと業者が言った場合、「何故無料なのか」「工事費用はどこから補填されるのか」をしっかりと確認しましょう。
また、逆に高額な工事費を徴収する施工業者もいるので要注意です。ほとんどの人は蓄電池の相場や設置費用を知らないため、騙して高額な工事費を請求してやろうという施工業者もいる事をお知りおきください。
④資料や見積書を持って帰る業者は疑おう
資料は自社製品を知ってもらうための大事なものであり、見積書は購入を検討する際の大事な決め手となるものです。それなのに持って帰ろうとすることは、資料や見積書の中に虚偽の内容が書かれている可能性が高いと言えるでしょう。見積もりを曖昧にして手続きを進めるという事は、知られたくない項目が存在する可能性が高いです。また、端数の金額が出ず、各項目の金額があまりに綺麗に揃っているのも要注意です。もし持って帰ろうとした場合、「後で確認したいので置いていってくれませんか?」と頼んでみましょう。それでも持って帰ってしまう業者には要注意です。
もし契約してしまってもクーリングオフがある
契約するつもりはなかったのに、話に乗せられてその日に契約をしてしまった。契約してくれるまで帰ってくれなかったから仕方なく契約したなど、自分の意思とは関係なく契約してしまった場合、クーリングオフで返品する事ができます。
クーリングオフとは、消費者が訪問販売等の取引で契約したり、マルチ商法などの複雑でリスクが高い取引で契約した場合、一定期間であれば無条件で一方的に契約を解除できる制度のことです。
訪問販売の場合、クーリングオフをすれば契約日から8日間以内であれば解除する事が可能です。手続きは書面で行い、はがきで簡単にできますので、国民生活センターのHPなどを確認しながら行ってください。その際、必ず原本のコピーを忘れないようにしましょう。
まとめ
蓄電池購入の際、業者選びについて気を付けるべきポイントや訪問販売対処法について解説してきました。以下、まとめになります。
・自社一貫型の所から複数相見積もりを行い、アフターフォローや導入コストを比較し、検討する
・訪問販売の場合、怪しいと思ったら警戒し、どんなに言葉巧みに誘われてもその日に契約しない
・後になってどうしても蓄電池を購入したくない場合、契約日から8日間であればクーリングオフができる
蓄電池は高い商品ですが、災害時の非常時電源やCO2などの環境問題を考えると将来必要となってくるかもしれません。長い間使い続ける設備だからこそ、安心して任せられる業者に設置して欲しいですよね。そのためには、しっかりと良い業者を見極め、訪問販売で押し切られないように注意しましょう。