蓄電池の寿命に強い影響を与えるDOD(放電深度)とは?

光熱費の削減や災害による長期停電の備えとして、蓄電池は非常に心強い味方になってくれます。しかし、導入するとなると費用が高く、いつまで使えるのか気になってしまいます。蓄電池の寿命はどれくらいで、寿命を迎えた後も使えるのでしょうか。
蓄電池の寿命にはDOD(放電深度)が深く関わってきます。今回は蓄電池の寿命とDOD(放電深度)について解説します。

DODとは

DOD(Depth Of Discharge)とは各電池を満充電状態にして標準的な条件で放電した際の放電容量を100%とした際、何%放電したかを表す量です。つまり、電池の放電容量に対する放電量の比のことです。簡単にいうと、1サイクル時に「蓄電池を何%まで放電するか」を表す値です。日本語でいうと放電深度になります。
たとえば、容量3,000mAhの電池を300mAhで放電した場合、その放電深度は10%になります。

蓄電池の寿命はサイクル回数によって決まる

蓄電池の法定耐用年数は6年ですが、この数値は寿命とは関係ありません。
法定耐用年数とは、国税庁が固定資産税を計算するために便宜的に定めた年数です。
法定耐用年数6年の蓄電池は6年で減価償却を迎えるため、税法上6年以降蓄電池の資産価値はゼロになります。
そのため、蓄電池の寿命と法定耐用年数は直接的に関係なく、6年後も使えなくなるわけではありません。

蓄電池の寿命は「サイクル回数」によって決まります。

サイクル回数とは

サイクル回数は、満充電してから完全放電した回数を「1サイクル」としてカウントされます。

満充電:蓄電池に残量100%まで充電している状態
完全放電:蓄電池が残量0%になるまで放電し、完全に電気を使い切った状態

蓄電池を長期間使用したい場合はサイクル回数ではなくDODの値を見る

1サイクルの定義はメーカーごとに定められているDOD(放電深度)によって変わります。

たとえば、蓄電池の寿命6,000サイクル、放電深度80%と表記しているメーカーがあるとします。この場合、「満充電(100%)から残量20%までの放電」が1サイクルということになります。

そのため、蓄電池を長く使いたいと思った場合は、サイクル回数が多いかではなく放電深度の値を見ましょう。
たとえば容量10kWhの以下の蓄電池があったとします。

蓄電池A:3,000サイクル、放電深度100%
蓄電池B:3,000サイクル、放電深度80%

この場合、蓄電池Bは残量20%を見越した寿命なので、20%以下まで放電した場合は蓄電池が劣化して3,000サイクルを下回る可能性が高くなります。

家庭用蓄電池で使用されるリチウムイオン電池は、基本的に0%まで完全放電すると劣化が早くなってしまいます。そのため、放電を残量20%で止めておけば、より長く使用できるようになります。

蓄電池が記載されている容量全てを充放電しない原因

蓄電池は、特性上カタログに記載されている容量全てを充電放電することはありません。その原因は以下の通りです。

電力変換効率

1つ目は「電力変換効率による電力損失」です。

太陽光発電で作る電気は直流ですが、商用電源や家庭内の電気はすべて交流電流です。しかし、リチウムイオン蓄電池は直流で充放電を行うため、交流からの充電、放電の際にそれぞれ電力を変換しなければいけません。その変換効率が大体95%程度ですので、過放電でそれぞれ5%の損失があるからです。このことを電力変換効率による電力損失といいます。

DOD(放電深度)

2つ目は「DOD(放電深度)」です。

二次電池はサイクル寿命がDOD(放電深度)に強く依存しています。放電深度は、充放電を繰り返す蓄電池の劣化と密接にかかわっており、放電深度が深いほど劣化が進行していき、電池が大きなダメージを受けます。

家庭用蓄電池では、およそ70%に設定されています。たとえば、カタログに10kWh、3,000サイクル、放電深度80%と記載されている家庭用蓄電池の場合、変換効率が大体95%程度であることも踏まえて、実際に使用できる容量は6.32kWhになります。

10kWh×95%×80%×95%=7.22kWh

蓄電池の寿命は放電深度に強く影響を受ける特徴がある

鉛蓄電池の場合、放電深度100%に比べて放電深度50%の方が約3倍も寿命が長くなるといわれています。

この特徴はリチウムイオン電池でも共通していますが、鉛蓄電池ほど影響は受けていません。ハイブリッドカーに搭載されている電池は、少しでも寿命を長くするために放電深度を浅くして使用しています。

また、電池のみで動く電気自動車はどうしても放電深度を深くしなければならず、そのような使い方に耐えられる性能が必要です。同じ蓄電池でも製品によって必要な放電深度は異なり、仕様書などにそれぞれの想定サイクル寿命が記載されています。

蓄電池のおおまかな寿命年数はサイクル回数を元に割り出すことが可能

蓄電池は充電と放電を繰り返し行いますが、普通に使っている分には残量0%の完全放電を行うことはありません。完全放電すると、そのバッテリーは使えなくなってしまうからです。

通常は30%や50%など、あらかじめ蓄電池に設定した放電深度に応じた残量までしか放電されないので、単純な充放電1回だけでは1サイクルに達しません。あくまで、サイクル回数は充放電の往復した幅の積み上げでカウントされます。

そのため、サイクル回数は放電深度、メーカー特性、蓄電池の使い方、周辺環境などの使用条件によって大きく変わります。
このように蓄電池の寿命は、サイクル回数が変動するために単純な年数では表現できません。

しかし、おおまかな寿命年数ならサイクル回数を元に割り出すことができます。
サイクル回数は1日1回の充放電を想定しているので、おおまかな寿命年数はサイクル回数を365日で割ることで求めることができます。
たとえば、サイクル回数が5,000回の蓄電池の場合、約13年が寿命となります。

5,000回÷365日=13

ただし、蓄電池のサイクル数はあくまでも目安であり、上記の計算方法で導き出した寿命は、あくまで蓄電池のバッテリー寿命です。バッテリー以外の部品の劣化などにより、上記の寿命より早く蓄電池が故障する可能性があるため、必ずしもこの求め方で出てきた期間使用できるわけではありませんのでご注意ください。

蓄電池の寿命目安はメーカー保証年数

蓄電池の寿命はサイクル回数でおおまかにわかりますが、それだけでは具体的な数値はわかりません。
また、メーカーによってはサイクル回数自体を公表していないところもあります。
その場合、蓄電池の寿命目安となるのが「メーカー保証年数」です。

蓄電池のメーカー保証には、機器の瑕疵保証と蓄電池の容量保証が備わっています。
機器の瑕疵保証とは、メーカーの基準通りに使用していたにもかかわらず、故障や不具合が発生した場合、メーカーが無償で交換・修理対応する保証です。
瑕疵保証は、蓄電池本体だけでなく、蓄電池用パワーコンディショナーなどの周辺機器にも適用されます。

蓄電池の容量保証とは、 メーカー保証期間内に蓄電池容量が一定値以下にならないことを保証するものです。そのため、メーカー保証年数以内に蓄電池容量が保証容量以下になった場合、メーカーが無償で保証してくれます。

たとえば、3,000サイクル(おおまかな寿命は約8年程度)の蓄電池の容量保証が7年間で、最大容量が60%以上保証の場合、7年以内に蓄電池の最大容量が60%未満になった場合は、保証を受けることができます。

この容量保証が、メーカー保証年数の数値であり、蓄電池の寿命目安です。

寿命が過ぎた蓄電池は使用可能だが最大容量が減少し続ける

蓄電池は、寿命(サイクル回数)が過ぎても最大容量が少なくなるだけでまったく使えなくなるわけではありません。
メーカーによって異なりますが、寿命を迎えた蓄電池の最大容量は大体10%~50%ほど減少します。10kWhの蓄電池の場合、9kWh~5kWhまで減少することになります。
このまま使い続けることはできますが、容量は減り続けていきます。

どのくらいの容量が残っていればいいのかは使用用途などによって異なりますが、一つの目安として非常時に備える場合5kWhは最低限あったほうがいいでしょう。
災害などで長期間停電になった場合、最低限家電を使用したと想定しても約5,500Wは使用するからです。そのため、蓄電池の容量が最低でも5kWh残っていなければ、1日も持たずに容量はなくなってしまいます。

劣化した蓄電池は発火する可能性がある

蓄電池は使い続ければどんなにメンテナンスを行っていても劣化していきます。
発売されているメーカーの蓄電池は、発火しないよう異常検知の機能はほとんど付帯されていますが、劣化した蓄電池は、電気の流れが内部でうまくいかずに発火する可能性があります。いきなり爆発したりする可能性はきわめて低いですが、劣化したものを無理矢理使いつづけた場合、そうなる可能性は否定できません。

そのため、寿命を迎えた蓄電池はバッテリーのみを交換するか、本体まるごと交換(買い替え)するかを選択します。
バッテリーのみ交換の場合、対応できる・できないメーカーが出てくる可能性があります。
今から蓄電池を購入しても寿命を迎えるのは早くても10年後くらいであり、その頃には蓄電池の本体価格も下がっているでしょう。そのため、寿命を迎え、劣化し始めたら買い替える方がいいでしょう。

まとめ

蓄電池の寿命とDODについて解説について解説してきました。以下、まとめになります。

・DOD(放電深度)とは、1サイクル時に「蓄電池を何%まで放電するか」を表す値
・蓄電池の寿命はサイクル回数によって決まり、DODに強い影響を受ける
・蓄電池の具体的な寿命の値はメーカー保証の容量保証年数といえる

蓄電池の寿命はサイクル回数によっておおまかな数字はわかりますが、サイクル回数はメーカーによって異なり、DOD(放電深度)、メーカー特性、蓄電池の使い方、周辺環境などの使用条件によって大きく変わるため、具体的な年数を表すことはできません。
しかし、同じ容量で記載されている蓄電池であっても、DOD(放電深度)の値によって実質容量が変わったり、最大容量にも強く影響を与えます。そのため、蓄電池の寿命を見る時はサイクル回数だけではなく、DOD(放電深度)の値を見るようにしましょう。

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蓄電池コンシェルジュ代表
根上 幸久

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