蓄電池の普及率は上昇している! これからの時代は自家消費にシフトしていく

2009年から始まった、太陽光発電による余剰電力を電力会社が10年間固定価格で買い取る余剰電力買取制度は2019年で満期を迎える家庭が出始めました。また、2012年に移行された固定価格買取制度(FIT)を満了する事を卒FITといい、卒FIT対象者には2つの選択肢があります。そのまま電力会社に電気を売電するか、蓄電池などを導入して自家消費するかです。

2030年に22~24%の再生可能エネルギーを目指すエネルギーミックスを揚げる日本にとって、蓄電池は欠かせない重要技術の一つといえるでしょう。売電・工場・ビル・住宅・災害時・家電・車載用と、活用方法の幅はどんどん広がっています。政府が進めるエネルギー政策との連動を考えると、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーと蓄電池の組合せは欠かせないものとなり、今後、蓄電池の普及率は上昇していくと予想されます。今回は蓄電池と普及率について解説します。

蓄電池の普及率が急上昇した要因

定置用蓄電池は2011年から徐々に設置台数が増えていきました。2017年度まではFITユーザーが多く、蓄電池の設置台数はゆるやかに上昇しています。しかし、FIT満了が近づくにつれ、蓄電池の普及率は急速に伸びていき、2018年度は7万台以上、2019年度は上期だけで5万台以上に伸び、2018年度と比べると2019年度は2倍近く普及率が伸びています。もちろん2019年度の普及率が急上昇したのは卒FITだけが原因ではありません。

災害時の非常用電源として関心が高まる

1つ目の要因は、災害時の常用電源として関心が高まったからです。

蓄電池の普及率が伸び始めた2011年頃は、蓄電池よりも太陽光発電が注目されていました。しかし、2011年に発生した「東日本大震災」、2019年9月には台風による大規模な停電が発生しました。地域によっては2週間以上電気が使えない場所もあり、冷蔵庫やエアコンが使えない辛い状態が続き、電気のない生活がいかに不安で苦しいか、被災者でなくても報道を毎日聞いて感じたのではないでしょうか。

また、東日本大震災の影響で原子力発電の稼働が止まり、一時期エネルギー自給率はたったの6%まで落ち込みました。日本のエネルギー自給率を上げていたのは原子力発電で、稼働を止めるまでは年間約30%の電力がこの原子力発電でした。その30%分の電力が0になり、もともと輸入に頼るしかなかった日本のエネルギー事情によって、その分のしわ寄せが化石燃料に来てしまい、自給率がたったの6%程度となってしまいました。

原子力発電を止めてから、急速に発電電力量を伸ばしてきたのが太陽光発電です。2010年度には発電電力量が35億kWhしかなかったのが、2018年度では発電量が627億kWhとなり、8年間で18倍強も増加しています。

太陽光発電システムや蓄電池が普及していったことで、2010年度には9.5%だった再エネ発電比率も2018年度には17%となっており、日本の電力の約5分の1を自国で賄えるようになったというわけです。

東日本大震災後、各家庭の危機意識が高まり、災害時の非常用電源として、蓄電池や太陽光発電の普及率が伸びていったと考えられます。

家庭用蓄電池の購入補助金が復活

2つ目の要因は、家庭用蓄電池の購入補助金が復活したことです。

国から支給される家庭用蓄電池の購入補助が2019年度から復活しました。国から支給される補助金額は最大で60万円と金額が大きく、蓄電池設置の初期費用を抑えることができるでしょう。

しかし、補助金は必着順であり、予算を超えてしまうと早く受付を打ち切ってしまいます。2019年度の補助金制度の受付期間は以下の通りでした。

・2019年6月6日~2019年9月30日

・2019年10月1日~2019年11月29日

このように期間が決まっていたため、2019年度の上期からFIT終了に合わせて蓄電池の普及率が急速に伸びたといえるのではないでしょうか。

蓄電池の普及率は伸び続ける

市場調査を行うシード・プランニングが行った、蓄電池の普及予測グラフによると、2019年度以降も、蓄電池の普及率は伸びていくことがわかっています。

出典:シード・プランニング

「新築戸建て」と「その他集合住宅、業務用」で見るとそれほど伸びは見られませんが、「既築住宅」を中心に普及率は伸びています。おそらく、これまで太陽光発電システムのみを設置していた家庭が、卒FITを迎えるために後付けで蓄電池を導入する事が予想されているからでしょう。

卒FIT後、大手電力会社に売電した場合7~9円/kWhであり、電気料金は年々上昇し続けています。その理由は、再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社が買取を行う制度が関係しています。つまり電気料金に上乗せされる負担額が上昇するからです。買取制度をやめない限り、電気料金が安くなることはないと言ってもいいでしょう。

売電収入目的として太陽光発電システムを搭載した家庭も、今後は発電した余剰電力を売るのではなく、蓄電池を購入し、電気を蓄えて使う自家消費をオススメします。

電気自動車(EV)にも期待が高まりつつある

家庭用蓄電池だけでなく、電気自動車(EV)も今後は走る蓄電池として期待が高まっています。

EVは太陽光で発電した余剰電力を充電することで、ガソリン代を減らすことが可能です。ガソリンで走行しても、走行中に電気自動車のバッテリーへ太陽光からの電気を充電します。それだけでなく、EVは家庭用蓄電池としての機能も持ち合わせており、V2Hという機器を接続することで、EVに蓄えた電気を家庭で使えるようになります。万が一、停電になっても、EVから電力を家庭に送電する事が可能です。そのため、EVは車としての機能だけでなく、非常用電源として今後は普及率が伸びると予想されています。

電気自動車の補助金

EVの普及率が伸びると予想されている理由はもう一つあります。それは補助金です。

2021年、日産リーフなど電気自動車(EV車)やV2Hなどcev(クリーンエネルギー車)に対して「経済産業省」「環境省」から高額補助金が交付されており、どちらかに公募することができます。

申請期間は次の通りです。

申請期間:2021年3月26日 ~ 2021年9月30日

電気自動車(EV車)に対する補助金額や交付条件は、経済産業省と環境省で異なります。

経済産業省環境省
補助金の予算37億円79億円
EV:上限60万円

PHEV:上限30万円

FCV:上限250万円

EV:上限80万円

PHEV:上限40万円

FCV:上限250万円

V2H商品:上限75万円

工事:上限40万円

商品:上限75万円

工事:上限40万円

経済産業省と環境省の共通の交付条件は次のようになります。

・車両販売会社からEVを直接購入

・2020年12月21日以降に新車新規登録

・EVとV2Hを同時期に導入

・補助金を享受したら、定められた期間は保有すること(車は4年間、V2Hは5年間)

・モニターに参加し、アンケートやPR活動に参加すること

経済産業省は補助対象が個人のみですが、環境省は法人も可能です。また、環境省は電力プランを再エネ電力プランに変更し、4年間の継続利用を条件にしています。

補助金の事例として「日産リーフe+」「V2Hプレミアムモデル」を導入した場合の補助金額は次のようになります。

・日産リーフe+:80万円

・V2H 本体:39.9万円

・V2H 工事:20~30万円

・補助金総額:139.9~149.9万円

補助金額は非常に高額ですので、補助金を活用すればV2Hを実質無料で導入することが可能です。

電気自動車(EV車)とV2Hの補助金の予算総額は経産省と環境省の合算で「わずか116億円」と極めて少額です。そのため、予算を超えてしまうと早くに打ち切られてしまう可能性がありますので、申し込んでみようと思った方は早めに行動するといいでしょう。

今後、蓄電池の普及を上昇させるには

蓄電池の購入目安は3~4人家族の場合であれば、1日の生活に必要最低限の電気を補う5kwh~7.8kwhの蓄電容量を持つ蓄電池といわれています。蓄電池の値段はメーカーや容量によって異なりますが、価格相場は90万円から160万円です。家庭用蓄電池の需要が高まっている現代では、メーカー努力のおかげで家庭用蓄電池の費用は年々下がっています。

蓄電池の内部にあるリチウムイオン電池も2011年には販売価格が226,953円だったのに対して、2018年は156,038円と販売価格が年々下がっており、少しずつ購入しやすくなっています。

しかし、リチウムイオン主原料は「リチウム」と呼ばれるレアメタルの1つで、限られた国でしか生産することができません。リチウムは、蓄電池以外にも様々な製品に使用されているので、希少価値が高いだけではなく需要も高いことから、価格も高くなっています。

今後、蓄電池だけでなく、電気自動車の普及も上昇すると見込まれており、リチウムイオン電池の消費量がこれまでより、さらに増加することになります。

リチウムイオン電池がないと、性能が良い蓄電池を提供することができないので、メーカーは原価が高くても購入することになります。そのため、リチウムイオン自体の価格が上がってしまうと、家庭用蓄電池の価格も上げざるを得ない状況になる可能性も十分に考えられるでしょう。

今後、蓄電池の普及を更に上昇させるには、蓄電池の値段がネックになってくるでしょう。そのためには各メーカーが無駄なコストを軽減させ、価格帯を少しでも安くできないかメーカー努力が必要になってくると考えられます。

まとめ

蓄電池の普及率について解説してきました。以下、まとめとなります。

・蓄電池は2011年の東日本大震災の防災意識から普及率が上昇していった

・卒FIT後、補助金制度を利用して蓄電池を導入する家庭が増え、2018年から2019年の普及率は急上昇した
・今後、蓄電池の普及率を上げるには蓄電池の価格が鍵となり、そのためにはメーカー努力が必要

蓄電池は太陽光発電に比べ、儲ける事はできません。しかし、電力を蓄えておくことで災害時に非常用電源として使うことができます。また、深夜の電気料金が安い時間帯に電気を蓄え、日中に太陽光発電による電気と貯蓄した電気を使うことで節約することもできます。

蓄電池はまだまだお手軽に手に入れられる値段ではありませんが、年々値段は下がっています。補助金を有効利用することで、今後も蓄電池の普及率は上昇していくのではないでしょうか。

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蓄電池コンシェルジュは、蓄電池を購入しようとお考えの方々に、蓄電池を活かした暮らしをするための上質なコンシェルジュサービスをご提供しております。再生可能エネルギーに理解のある方々にご利用頂くことが「脱炭素社会」実現へのカギとなります。蓄電池コンシェルジュは、文化的、社会的資産を後世に引き継ぎ、社会的責任としての取組みのみならず、日本の人口減少と地球温暖化の危機を救うためのお手伝いをさせて頂いております。

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蓄電池コンシェルジュ代表
根上 幸久

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