年々、電気代は上がり、売電価格は下がっていくため、賢い電気の使い方がこれから必要となってくるでしょう。蓄電池は太陽光発電で作られた電力や電気会社から購入した電力を蓄え、昼間に貯めた電気を夜間に放電して使用する事が出来ます。また、普段電気代を節約するだけでなく、災害による停電時に非常用電源としても活用できます。
蓄電池を導入してみようと思っても、種類がたくさんあり、メーカーによって特徴がそれぞれ異なるため自分にあった蓄電池はどれがいいのかわからないと悩む人は多いのではないでしょうか。最適な蓄電池メーカーは蓄電池の使い方次第で変わります。まずは、蓄電池の使い方をよく検討した上で、各蓄電池メーカーの特徴を捉えて選ぶのがいいでしょう。
今回は蓄電池を購入する際、どう比較すべきかを解説していきます。
蓄電池の比較すべきポイント
各メーカーから様々な蓄電池が販売されています。蓄電池の比較すべきポイントは6つです。
①蓄電容量
②サイズ
③寿命
④価格
⑤保証
⑥停電時出力
①蓄電容量
蓄電容量の数値が大きいほど電気を蓄える量が多くなり、長時間使用する事ができます。しかし、容量が大きくなるほど値段も高くなるため、自分達に必要な容量はどれくらいか見定めてから購入しましょう。
②サイズ
蓄電池には持ち運びができるポータブル型とコンクリートで土台を作って固定する定置型があります。定置型の場合、周囲四方1m程のスペースがあればいいでしょう。あらかじめ設置場所の寸法を確認して、きちんとおさまる蓄電池を購入しましょう。
③寿命
蓄電池には、充放電可能な回数「サイクル数」が設定されています。保証されているサイクル数を超えると徐々に蓄電容量が減少し、劣化していくため、使用年数を想定した上で蓄電池を購入しましょう。
④価格
蓄電池は本体価格がお手頃なものからとてつもなく高いものまであります。発売当初よりも年々安くなってきていますが、それでもまだ高いです。容量が多いほど蓄電池は高価になります。高価な蓄電池だから良いというわけではなく、自分達に必要な電力を予めシミュレーションし、把握した上で必要な容量の蓄電池を選びましょう。
⑤保証内容
保証内容はメーカーによって様々ですので、どのような保証内容があるかよく理解してから購入しましょう。たとえば「蓄電池容量保証」(蓄電池の容量が突然低下した時の保証)や「機器瑕疵(かし)保証」(正常な状態で使用しているのに故障した時の保証)などがあります。
⑥停電時出力
停電時出力とは、停電が発生したときに最大で使用できる電力のことです。つまり停電時に使用できる家電の数です。使用する機器の組み合わせにもよりますが、最大でどのくらいの電気をどれだけの時間使うことが出来るかも蓄電池を選ぶ上で大切なポイントになります。この数値を元に、必要な容量を考え、自分や家族が安心できると思える蓄電池を購入しましょう。
国内主要メーカーの特徴
主要メーカー10社の蓄電池の特徴を紹介します。
1.ニチコン
2.村田製作所
3.長州産業
4.Looop
5.田淵電機
6.オムロン
7.住友電気工業
8.京セラ
9.シャープ
10.パナソニック
ニチコン
ニチコンは家庭用蓄電池の累計販売台数が国内一位となっている老舗メーカーの一つです。ニチコン蓄電池の特徴は3つです。
・ラインナップの豊富さ
・10kWh超の大容量蓄電池が多い
・世界で初めてEVと住宅を連携させた「V2H」を開発した
村田製作所
村田製作所は電子部品を開発する会社であり、2018年に「All−in−One蓄電池システム」を用いて蓄電池業界へ参入しました。
村田製作所の特徴は4つです。
・車載用やスマホ用のリチウム電池で世界上位シェアを誇っており、その技術を活かしている
・蓄電池のラインナップは2.3kWhのハイブリッド型蓄電池のみ
・増設用蓄電池ユニット3.5kWhを組み合わせると2.3kWh・5.8kWh・4.6kWh・8.1kWh・11.6kWhの5種類の容量ラインナップに相当し、非常に細やかな容量調節が可能となる
・ 独自技術のオリビン型リン酸鉄リチウムイオン電池FORTELIONを採用しており長寿命化を実現
長州産業
長州産業は中国エリアを拠点とした住宅設備メーカーです。太陽光発電、蓄電池を開発、展開しており、蓄電池メーカーとして確固たる地位を築いています。
長州産業の特徴は3つです。
・屋内設置の蓄電池が多い
・無償保証期間が15年
・2020年7月から新電力の「みんな電力」と共に「CICフレンズプラン」という独自の電力料金プランの取り扱いをスタート
Looop
Looopは太陽光発電をセット販売するメーカーであり、蓄電池や新電力事業へも参入しています。
Looopの特徴は3つです。
・容量4.0kWhのハイブリッド型蓄電池が約90万円と、製品本体価格が圧倒的に安価
・LooopでんちとLooopでんきの料金プランを組み合わせると、電力会社の電気料金よりも3円/kWh安くなってお得
・Looopでんちの他にLooopでんちのAI制御が搭載されたオムロン製の単機能型蓄電池も取り扱っている
田淵電機
田淵電機は、太陽光発電のパワーコンディショナーの上位シェアメーカーの1つであり、蓄電池用のパワーコンディショナー、ハイブリッド型蓄電池の開発を行っています。
田淵電機の蓄電池の特徴は3つです。
・ラインナップをハイブリッド型蓄電池「EIBS(アイビス)」に絞ることで、高性能化を図っている
・ハイブリッド型蓄電池EIBS7は3種類のラインナップがあり、共通点は容量が7.04kWhである事、異なる点は太陽光発電の容量の大きさに合わせて調節できるパワーコンディショナーの出力と回路数
・7.04kWhで足りない場合、蓄電ユニットを増設することで14.08kWhまで増強できる
オムロン
オムロンは体温計などの家庭用医療機器で有名ですが、太陽光発電のパワーコンディショナーのシェアNo.1メーカーであり、蓄電池でも主要なメーカーの1つです。
オムロンの特徴は2つです。
・蓄電池のサイズが空気清浄機ほどのサイズ感のコンパクト設計
・機器の組み合わせを変えるだけで単機能型、ハイブリッド型、全負荷対応ハイブリッド型の3種類へ自由自在に変化させることができるマルチ蓄電プラットフォーム「KPBP-Aシリーズ」を2020年10月から販売している
住友電気工業
住友電気工業は、自動車用のワイヤーハーネスや通信ケーブルを開発している非鉄金属メーカーであり、蓄電池開発にも力を入れています。
住友電気工業の特徴は4つです。
・サイズがエアコン室外機の2/3、重量も55kgと小型軽量かつ容量を最大限に活用した使い方ができる「POWER DEPO Ⅲ」をラインナップ
・「POWER DEPO Ⅲ」は小型軽量なため、コンクリート基礎工事が不要で、設置場所を柔軟に決める事ができる
・容量は3.2kWhだが1日2サイクルにより効率的な電力利用が可能で、2台設置すれば6.4kWhに増強できる
・設置工事不要で室内にそのまま設置ができ、コンセントから給電できる容量2.9kWhのスタンドアローンの可動式蓄電池「POWER DEPO Ⅱ」もラインナップ
京セラ
京セラは太陽光発電の老舗メーカーですので、創蓄連携を提案する一環として蓄電池がラインナップされています。
京セラの特徴は4つです。
・単機能型蓄電池の12kWhは設置可能温度範囲が-20℃〜-40℃まで対応しており、寒冷地でも屋外設置が可能
・蓄電池のメーカー保証に自然災害の10年保証も含まれているため、エリアを気にせず安心して設置ができる
・2019年にグッドデザイン賞を受賞
・2020年に世界初の長寿命・高安全性・低コストを実現したクレイ型リチウムイオン蓄電池「Enerezza」を販売
シャープ
シャープは電化製品で有名ですが、太陽光発電の累計販売台数が1位のメーカーであり、蓄電池でもNo.1シェアを持っています。
シャープの特徴は5つです。
・太陽光発電の高いシェアを活かして、ハイブリッド型蓄電池でNo.1シェアを得ている「クラウド蓄電池システム」をラインナップ
・単機能型蓄電池の取り扱いはありませんが、そのかわり4.2kWh、6.5kWh、8.4kWhと容量を細かく3種類も設定
・6.5kWhは特定負荷タイプと全負荷タイプを選べる
・業界で初となるAI雷注意報連携を搭載
・保証を申し込めば無償でついてくる「蓄電池Webモニタリングサービス」という遠隔監視サービスを提供
パナソニック
パナソニックは、電池に関して1931年からという長い歴史があり、開発力、生産力共に世界トップレベルの実力を蓄電池に注いでいます。
パナソニックの特徴は5つです。
・ハイブリッド型蓄電池のシェアがシャープについでNo.2
・ハイブリッド型から単機能型まで幅広く多彩なラインナップ
・ハイブリッド型蓄電池は、蓄電池ユニットの組み合わせで3.5kWh、5.6kWh、7.0kWh、9.1kWhと小刻みに容量の調整が可能で、最大33.6kWhまで増設可能
・単機能型も、3.5kWhと5.0kWhに加えて、1.0kWhの分電盤型蓄電池の3種類ある
・蓄電池を後から追加設置できる「創蓄連携システムR」も展開
使い方別おすすめ蓄電池メーカー
蓄電池の特徴を踏まえた上で、実際にどのメーカーが自分にあっているのかをそれぞれ紹介したいと思います。
できるだけ長期間蓄電池を使いたい場合
できる限り長期間蓄電池を使いたい場合、機器保証以上に容量保証をしてくれるメーカーがお勧めでしょう。そのため、メーカー保証年数と容量保証の保証値をよく確認しましょう。メーカー保証は10年、15年が主流ですが、15年は有償の場合が多いです。また、容量保証の保証値は、10年、15年で50~60%程度とどのメーカーも横並び設定です。しかし、オムロンのKPAC-Bシリーズは15年無償保証で70%の容量保証を行っています。また、インターネット経由で遠隔監視サービスも付帯している事も比較する際のポイントとなるでしょう。ニチコン、村田製作所、長州産業、京セラも容量保証値はオムロンに及びませんが、15年無償保証を提供しています。
可能な限り安価に蓄電池を導入したい場合
可能な限り安価に蓄電池を導入したい場合、容量の少ない蓄電池をラインナップしているメーカーがおすすめです。
4.0kWhを下回る蓄電池を扱うメーカーとして、ニチコン、村田製作所、住友電気工業、Looop、京セラ、パナソニックなどが挙げられるでしょう。
価格で比較する際は、同じメーカー・機種でも相見積を取り、kWh単価でどこがお得かをじっくり見極めるのがポイントです。
非常時にも安心して蓄電池を使いたい場合
非常時などの停電があっても、蓄電池で安心した生活を送りたい場合、ニチコン、田淵電機、オムロンがおすすめです。
この3つのメーカーはどれも12kWh以上の大容量であり、かつ全負荷タイプで200V対応の高出力な機種を揃えている点がポイントだと言えるでしょう。容量が大きければ、その分だけ停電時に使える電力が増え、節電しながら過ごせば長期間の停電でも電気が使えるので、安心して過ごすことができるかもしれません。
まとめ
蓄電池を購入する際、どう比較すべきかを解説してきました。以下、まとめになります。
・自分に必要な蓄電池はどんなものかよくシミュレーションした上でメーカー比較する
・蓄電池メーカーごとに特徴があるので、導入時にどれがいいか比較・検討すべし
・最適な蓄電池メーカーは蓄電池の使い方次第で変わる
蓄電池メーカーの特徴を知り、いざ導入を検討したら設置場所や停電時に必要な電気容量や家電の数をシミュレーションし、自分達に見合った蓄電池を購入するのがいいでしょう。