再生エネルギーを生み出す太陽光発電は固定買取制度(FIT)により普及していきました。しかし2019年に住宅用太陽光発電の卒FITが始まり、買取電力の値段は年々低下し、電力会社から買い取る電気代は増々上昇する傾向にあります。更に豪雨や台風、地震といった自然災害による停電もあり、非常時電源や自家消費のために蓄電池を導入したいという声は増えつつあります。太陽光発電と蓄電池を連携させ、自家発電・自家消費を行う事で電気を賢く無駄のない使い方をしたいと思う方は多いのではないでしょうか。導入を検討されている方の参考になるよう、今回は蓄電池システムについて解説していきたいと思います。
蓄電池システムとは
蓄電池システムとは、蓄電池、パワーコンディショナー、連系盤などによって構成され、エネルギーマネジメントシステム(EMS)などからの指令に応じて充放電するシステムの事です。太陽光発電と合わせて設置、または蓄電池単独で設置する事が可能です。電力ピーク対策や系統停電時のバックアップとして用いられ、出力変動対策や需給バランス改善などの目的で使用されています。
簡単に説明すると、電気を蓄え、蓄えた電気を家庭内の電気機器に好きな時に供給できるシステムなのです。
蓄電池システムを導入していない場合、電気は電力会社から買い取るか発電して作り出さなければいけません。蓄電池システムがあれば、蓄えていた電力を使用する事ができるため、停電や夜間で発電が行えない状況でも電力を使用する事が可能です。
蓄電池システムに電気を蓄える仕組み
蓄電システムに電気を蓄える方法は2つです。
①電力会社から買った電気を充電
②発電システムの電気を受電
太陽光発電やエネファームなどの発電設備によって作り出した電気を蓄電池に貯める事ができます。ただし、蓄電池の中には太陽光発電やエネファームに接続できないものもあるので、購入時に必ず確認するようにしましょう。
容量と出力
電気をどれくらい蓄えられるかを表すことを容量(kWh)と言います。
容量が大きな蓄電池ほど、より多くの電気を貯める事が可能です。
たとえば、消費電力が1,200W(1.2kW)の家電を蓄電池で動かす場合、使用時間は以下のようになります。
容量3kWhの蓄電池:2.5時間使用可能
容量10kWhの蓄電池:8時間使用可能
また、蓄電池システムを一度に動かせる家電の数を表すことを出力(kW、kVA)といいます。
蓄電池システムの活用方法
蓄電池システムの活用方法は2つです。
①「ピークシフト」と「ピークカット」
②夜間電力の活用
「ピークカット」とは、最も使用電力の多い時間帯の電力の使用量を削減することです。ピークカット により、単価が高い時間帯の電気料金を抑え、最大デマンドを下げ、電気の基本料金の削減を実現します。
最大デマンドとは「直近1年間で最も電気を使用した時間帯(30分間)の電気使用量」のことです。基本料金は最大デマンドによって決められるので、最大デマンドの数値がその後1年間に渡っての契約電力となります。たった30分間電気を使いすぎたことで最大デマンドが上がってしまうと、その後一年間は下がりません。そのため、電気をあまり使っていない月でも高い電気料金を支払うことになってしまいます。電気の最大使用量を抑えることができれば最大デマンドが下がるため、年間を通しての基本料金を下げることが可能となります。
「ピークシフト」とは、電力の使用が少ない時間帯に電気を貯めておき、多く使用する時間帯に使うことです。電気料金がアップする午後1時から午後4時までのピーク時間帯に蓄電池に貯めている電気を使用し、電気料金が安い夜間などでは蓄電池を充電します。つまり、買電を日中の時間帯から(電力の使用量が少ない)夜間などの時間帯にシフトさせて、使用電力を平準化させているのです。電力使用のピークとなる時間帯を他の時間帯に「シフト」しているだけなので、使用する電力量そのものは変化しません。しかし、電気料金が安い夜間に電気を蓄電池システムに充電しておくと、その電気を昼間に使用できるため、夜間の電気料金単価と昼間の電気料金単価の差額分、電気代がお得になります。
「ピークシフト」と「ピークカット」は特定の時間帯に電力消費が集中するのを防ぐため、夏場の電力不足解消にも貢献することができます。
家庭用蓄電池とは
蓄電池システムのコアである蓄電池とは、電気を蓄えることで繰り返し使用できる化学電池のすべての総称です。二次電池や充電式電池とも呼ばれています。
蓄電池は家庭用と産業用があります。
家庭用蓄電池の特徴は6つです。
・コンパクトだから省スペース
・太陽光発電と連携できるものが多い
・リチウム電池が一般的
・リチウムイオン電池のサイクル数は(メーカーによって異なりますが)おおよそ3,500回なので、寿命は10年ほど
・蓄電容量は1kWから15kWぐらいで
・価格帯は数十万円台から200万円台まで幅広い
産業用蓄電池の特徴は5つです。
・蓄電池容量は十数kWhから20kWh台のものもあり、最大で60kWhを超える大容量タイプもある
・サイクル数も8,000サイクルを超える高性能タイプもあり、寿命が家庭用より長い
・価格帯は数百万円から1,000万円を越える
・家庭用蓄電池よりも補助金額が高く設定されている
・主に電力の貯蔵施設や工場などのバックアップ用電源として活用
家庭用と産業用の大きな違いは4つになります。
・蓄電用量(サイクル数による寿命)
・価格面
・設置面積
・使用目的
今回は家庭用蓄電池について見ていきましょう。
家庭用蓄電池の種類
家庭用蓄電池には大きく分けると2種類あります。
①定置式蓄電池
②移動式蓄電池
①定置式蓄電池
定置式蓄電池は据え置き型蓄電池の事であり、所定のスペースを確保した上で蓄電池を設置します。
定置式蓄電池の特徴は2つです。
①電気料金を削減
②停電時などのバックアップ電源としての利用
③リチウムイオン電池を採用しているため価格が高い
④家庭用蓄電池の中でも大容量なものが多い
②移動式蓄電池
移動式蓄電池とはポータブル式蓄電池の事であり、非常時用、または緊急時の一時利用として使われます。
東日本大震災時に大型のスーツケースのような移動式蓄電池がテレビに映ったことを覚えている人も多いのではないでしょうか。
移動式蓄電池の特徴は2つです。
①非常用としては最適だが日常用には容量不足
②お手軽に購入する事ができる
移動式蓄電池は災害時の非常用電源として使う事を前提に作られています。そのため、低価格で誰でも手に入れられる事が求められます。最近ではより軽量で、複数台接続する事で容量の拡大ができるものも登場しているようです。
家庭用蓄電池システムを設置するメリット
家庭用蓄電池システムを設置するメリットは2つです。
①災害時に電気が使える
②電気量削減
①災害時に電気が使える
災害により大規模な停電が発生しても、家庭用蓄電池があれば2日間ぐらいは充電しておいた電力を活用し、電気のある生活を送ることができるでしょう。
蓄電池には「全負荷型」と「特定負荷型」があります。
「全負荷型」とは家全体を包み込むように電気を送る事ができ、「特定負荷型」はあらかじめ指定している一部の部屋やコンセントのみ電気を送る事ができます。どちらを設置するかはその人のライフスタイルによって異なります。一人暮らしならば特定負荷型を選択した方が節電できますし、赤ちゃんやお年寄りがいる家庭では停電してもある程度普段通りの生活ができる全負荷型の方がいいでしょう。
全負荷型の場合、蓄電池の容量が5.0kWh以上だと合計で1kW前後の家電を使用した場合に5~6時間は持たせることが可能です。使用する家電を制限すれば、より長く電気のある生活を送る事ができるでしょう。
不安で押しつぶされそうな避難生活にも電気があれば安心材料になりますので、災害時に電気が使える事は一番のメリットと言えるのではないでしょうか。
②電気料金削減
「ピークシフト」と「ピークカット」、「夜間電力の活用」を上手に行うことで、電気代を削減することができます。
また、蓄電池によっては「グリーンモード」や「深夜電力活用モード」といった機能がついている機種もあります。モードを適切に使用することで、電気代が安い時間帯に充電を行い、昼間の電気代が高い時間帯に自動で放電してくれるので、自然と節電が行なえます。
家庭用蓄電池システムを設置するデメリット
家庭用蓄電池システムを設置するデメリットは4つです。
①コスト負担
②永久に使えない
③設置スペースを考慮しなければいけない
④ダブル発電になると売電単価が下がる
①コスト負担
家庭用蓄電池には移動式蓄電池と定置式蓄電池があります。一定以上の容量を求めた場合、定置式蓄電池を選択する事になるでしょう。しかし、定置式蓄電池は導入するのに100万円以上のコストがかかります。蓄電池を導入して売電価格で元を取る事は難しいでしょう。
②永久には使えない
家庭用蓄電池にも寿命があり、およそ10年です。それ以降は蓄電できる電気は元の容量の7割から9割まで減少すると言われています。しかし、クレイ型蓄電池など、新型蓄電池が次々と開発されていますので、耐用年数は増加傾向にあります。
③設置スペースを考慮しなければいけない
蓄電池を設置する場合、メンテナンスが行えるよう周囲1mは余裕のある場所に設置しなければいけません。また、基礎工事だけでなく、雨避けや日差し避けも設置場所によって必要となってきます。そのため、設置スペースをよく考えてから導入を決めましょう。
④ダブル発電になると売電単価が下がる
ダブル発電とは、太陽光発電が発電する時間帯に、蓄電池の放電を行うことで太陽光発電の売電割合を増やす事です。今市場に出回っている蓄電池のほとんどは太陽光発電が発電しているときには放電しない設定にできるようになっており、もしダブル発電に該当する場合には太陽光発電の売電価格が下げられるような仕組みとなっています。
まとめ
蓄電池システムについて解説してきました。以下、まとめになります。
・蓄電池システムとは、蓄えた電気を電気機器に好きな時に給電できるシステム
・「ピークカット」と「ピークシステム」を使えば電気代購入量の削減可能
・電気料金の安い夜間に充電して、日中に蓄電した電力を使えば差額で電気代を節約できる
蓄電池システムを賢く使えば、電気代削減だけでなく、電気が集中する時間をシフトさせることができます。太陽光と蓄電池を組み合わせれば、自家発電・自家消費も可能となるので、電力会社から電気を極力買わなくて良いため、更なる電気代削減に貢献できます。しかし、蓄電池は導入するのに100万円ぐらいかかる高価な買い物です。定期的にメンテナンスも必要であり、老朽化するため寿命も性能も永遠ではありません。そのため、蓄電池システムを導入する際は、まず自分達の電気消費量を確認し、どの容量の蓄電池が最適かを調べるのがいいでしょう。そして相見積もりを行い、設置場所などをよく検討した上で導入してみてはいかがでしょうか。きっと災害時の停電や電気代削減で困っているあなたの味方になってくれるでしょう。