蓄電池のリコールが実際行われたらどうなる? リコールの目的やその流れを解説

蓄電池や家電を購入して、突然爆発して火災が発生するなどの事件が発生しています。この場合、事業者はすみやかに製造、流通、販売の停止を行い、消費者に情報提供と注意喚起を行い、消費者が保有している製品の交換、改修、引き取りを行います。これをリコールといいます。今回は蓄電池とリコールについて解説します。

リコールの目的

リコールの目的は、消費生活用製品による事故発生および拡大の可能性を最小限にすることです。そのために以下のような対応を取ります。

・製造、流通及び販売の停止/流通及び販売段階からの回収
・消費者に対するリスクについての適切な情報提供
・類似の製品事故等未然防止のために必要な使用上の注意等の情報提供を含む消費者への注意喚起
・消費者の保有する製品の交換、改修(点検、修理、部品の交換等)又は引取り

リコール実施責任者

リコール実施責任者は以下の通りです。

製造事業者または輸入事業者

製造事業者または輸入事業者は、消安法第 38 条第 1 項において製品事故などの未然防止及び拡大を防止するため必要があると認める場合は、自主的にリコールを実施する責務があります。

部品製造事業者に外注した部品の不具合が原因で事故が発生した場合であっても、リコールは完成品について実施されるので、リコール実施事業者は原則として製造事業者です。
ただし、部品・原材料製造事業者は、完成品製造事業者が実施するリコールにかかる諸費用の分担等につき、必要に応じて対応することが求められます 。

製造事業者または輸入事業者が破産して管財人にリコール実施の継続を依頼することや、吸収合併されるような場合には、存続会社において当該リコールが継続されなければなりません。
実施主体側が倒産や破産状態にあり、リコールの実施が不能である場合には、もう一方がリコールの実施主体となることが求められます。

販売事業者、流通事業者、修理事業者、設置事業者など

販売事業者、流通事業者、修理事業者、設置事業者などは、リコールの実施事業者から要請があった時にリコール対応に協力し、製品所在に関する情報提供やリコールポスターの掲示など、積極的に協力することが求められます

重大製品事故の発生を知った時、その旨を該当製品の製造事業者または輸入事業者に通知し、製品事故について情報収集したものを一般消費者に適切に提供することが求められています。
また、製造事業者または輸入事業者が破産した場合、販売事業者または流通事業者がリコールの実施者となります。

リコールにおいて日頃から求められる取り組み

リコールにおいて日頃から求められる取り組みとは、以下の通りです。

・経営方針にリコールを含む製品安全確保を経営上の重要課題として明示する
・経営者自らがリコールに背を向けない姿勢を社内外に示す
・製品設計段階からリスクアセスメントを行う
・製品事故等・クレーム情報を積極的に収集する体制を整備する
・製品事故等対応のためのマニュアルをあらかじめ作っておく
・リコールを円滑に行うために、常日頃サポート機関等との関係を構築しておく

製品事故などへの速やかな対応

製品事故などへの速やかな対応は以下の通りです。

事実関係の把握

1つ目は「事実関係の把握」です。

全ての情報の確認を待つのではなく、判明している情報を整理し、経営者に報告
し、国または製品評価技術基盤機構(NITE)に速やかに報告します。

リコール実施の判断

2つ目は「リコール実施の判断」です。

消費者の安全・安心の確保を第一に考え、リコール実施の判断対応をします。

リコールに要する費用の確認と確保

3つ目は「リコールに要する費用の確認と確保」です。

リコールには多額の費用がかかりますので、あらかじめリコール実施に要する費用を考慮し、生産物回収費用保険(リコール保険)の利用なども検討しておくことが重要です。

リコールプランの策定

4つ目は「リコールプランの策定」です。

リコールプランとは、リコールを実施するにあたっての対応方針を決定し、社内外に対する姿勢を明確にするものです。リコールプランの策定は以下の留意点を元に行われます。

確実に消費者に伝わる告知方法を捜す

リコールの目的は、消費者への製品危害の拡大防止につながる告知を行って、被害の未然防止に努めることです。新聞社告やホームページへの社告は告知方法の 1 つであり、いかに製品の安全情報を伝えられるかが重要です。

死亡や重傷な被害の危険がある場合は徹底的に周知する方策をとる

特に重篤な危害の発生可能性がある場合、迅速かつ確実に消費者へ危険を周知する告知方法を行わなければいけません。

関係事業者、関係機関との連携や協力体制を考える

販売店、親会社、公共機関、監督官庁、業界団体等と連携・協力して、情報の流れや主体となる責任母体や責任分担を明確にし、自社だけでは対応が困難な部分をカバーする方策を考えます。

その他、考えられる手法を定め、全て活用する

予防措置、リコール体制の構築、リコール時のマネジメントのコンサルティングに加え、コールセンター、配送サービス等のアウトソーシングを活用することも選択肢の 1 つです。
しかし、リコールの責任実施母体は、あくまでも当事者である実施事業者ですので、リコールの終了などの重要な意思決定は、責任をもって実施事業者が判断しましょう。

リコール実施

5つ目は「リコール実施」です。

消費者の製品使用等の実態に応じて、効果的な媒体・方法を組み合わせて情報提供方法を決定し、採用します。その後、全ての役員・従業員、関係取引先、行政機関等にリコール実施を報告・連絡します。

顧客情報がわかる場合は、電話やダイレクトメールが有効です。電話が繋がらない場合、曜日や時間帯を変えて、繰り返し行うと効果的です。ダイレクトメール送付の場合、当該手紙ないしハガキがリコールに関するお知らせであることを明示し、販促等、通常のダイレクトメールとは異なるものであることを強調・差別化しましょう。製品の購入手続きの過程やユーザー登録の過程で電子メールアドレスの登録が行われている場合、購入製品と電子メールアドレスを利用して対象顧客にリコール情報を送信すると効果的です。
顧客情報が明確でない場合、製品や業種に応じて以下の方法で情報提供媒体を決定しましょう。
・電子メール
・直接訪問
・販売事業者、流通事業者等を通じての連絡
・チラシやHP掲載、電車広告などの情報提供方法の選択

リコールの実施状況の継続的監視・評価

リコールの実施状況の継続的監視・評価は以下の通りです。

進捗状況のフォローアップ

1つ目は「進捗状況のフォローアップ」です。

消費者から問い合わせ等の反応があった場合、どの媒体で情報を得たのかを確認し、効果検証を行いましょう。
定期的に進捗状況の検証を行い、その結果に基づきリコール内容のフォローアップを行います。製品事故等が更に起きないことを確認できるまで、フォローアップは継続するようにしましょう。

製品安全体制へのフィードバック

2つ目は「製品安全体制へのフィードバック」です。

リコール原因を踏まえた製品の改良など、リコール実施の経験を経営や社員教育にフィードバックします。

リチウム蓄電池のリコール

消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づき報告のあった重大製品事故について、以下のリチウム蓄電池のリコール(充電率調整及び無償製品交換)を重大製品事故として発表しています。

原因製品
ガス機器・石油機器

関連製品事故

ガストーチなど
製品起因が疑われるエアコンの室外機、電動アシスト自転車、スチーム式加湿器、リチウム蓄電池、電動立ち乗り二輪車など
ガス機器・石油機器以外の製品関連で、製品起因か否かが特定不可スマートフォン、エアコン、携帯型電気冷温庫、エアコンの室外機、介護ベッド、電気掃除機、ノートパソコン、液晶テレビなど

これらの情報は消費者庁ホームの公式HPのお知らせで見ることができます。
URL:https://www.caa.go.jp/notice/entry/027069/

オムロンの蓄電ユニットリコール

オムロンソーシアルソリューションズ(OSS)は2021年11月19日に、「住・産共用フレキシブル蓄電システム」と「太陽光発電用ハイブリッド蓄電システム」に使用している蓄電池ユニット「KP―BU65―A」「KP-BU98-B」をリコール(充電率調整及び無償製品交換)すると発表しました。
また、同じ蓄電ユニットを搭載し、長州産業ブランドで販売された「CB-LMK65A」および「CB-LMK98A」、東芝エネルギーシステムズのブランド(CICソラトモ)で販売された「TPV-S3-B65」も対象となります。これまでにこれらのブランド全ての合計で、1万4,853台の販売実績があり、オムロンソーシアルソリューションズが韓国LGエナジーソリューションに製造委託し輸入したものです。
セルに使用している電極について、製造プロセスの問題から発火リスクがあるとの報告を受け、リコールを進めています。

LGから製造プロセスの問題で発火のリスクがあると報告を受けたため、7月5日からホームページで公表し、購入者に対して順次ダイレクトメールなどでリコール(充電率調整及び無償製品交換)を連絡していますが、約6,000台(2021年10月21日時点回収率:4.6%)は安全対策を施すなどの対応が取れていません。
今回のリコールとなる蓄電ユニットの全機種一覧は以下の通りです。

会社名型式・品番製造期間JANコード対象台数
オムロンソーシアル

ソリューションズ(OSS)

KP-BU65-A2017年3月~45497341618485,019
KP-BU98-B2017年9月~45497341932832,395
長州産業株式会社

 

CB-LMK65A2017年3月~45497341619547,117
CB-LMK98A2017年9月~45497345344828
東芝エネルギー

システムズ株式会社

TPV-S3-B652017年3月~4549734161992314
合計14,853

設置していた家屋では3件の火災が起き、1件は全焼しました。人的被害は発生していませんが、原因は未だ調査中です。

まとめ

蓄電池とリコールについて解説してきました。以下、まとめになります。

・リコールの目的は、消費生活用製品による事故発生や拡大の可能性を最小限にすること
・リコール実施事業者は原則として製造事業者だが、要請があった場合、他の関連事業者は積極的な協力が求められる
・蓄電池の不良は火災が発生する場合が多いため、リコール対象になった場合すみやかに連絡して回収してもらう

どんなに万全の対策を行っていたとしても、想定外のことが起こって製品事故によって火災などが発生する可能性はゼロではありません。そのため事業者は、日頃からできる対策は全て行い、リコールが実施されてもすみやかな対応が求められます。蓄電池のリコールは火災など人的被害が発生する可能性が大きいので、消費者はリコールが発表されたらすぐに連絡するようにしましょう。

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蓄電池コンシェルジュ代表
根上 幸久

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