卒FITで売電終了を迎えた住宅用太陽光発電は自家消費を選ぶとお得になる?全量自家消費という選択肢!

2019年11月以降、太陽光発電でつくられた余剰電力の固定価格買取制度(FIT)による買取期間が順次終了しています。住宅用太陽光発電設備を所有している一般家庭において、蓄電池を導入して自家消費に回すか、引き続き電力会社と契約して売電を継続するか迷っている方もいるのではないでしょうか。
また、この買取期間満了をきっかけに、各電力会社が余剰電力の買取価格や加入条件などの発表を行っていますが、いったいどの電力会社のプランがいいのか悩みどころです。
今回は卒FITを迎えた住宅用太陽光と売電終了について解説します。

卒FITを迎えた2019年問題とは

固定価格買取制度(FIT制度)は、再生可能エネルギーの普及を目的として2012年7月にスタートした制度です。再生可能エネルギーで発電した電気をすべて電力会社(小売り電気事業者)が買い取り、買い取るときにかかった費用は「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」という形で、電気を使用している各世帯からの毎月の支払いによって賄われています。電気を使用している各家庭から再生可能エネルギー発電促進賦課金を回収し、まだコストがかかっている再生可能エネルギーの普及を支えているのです。
この買取価格は固定価格であり、期間中に変わることはありません。2021年現在では、家庭用太陽光発電(10kW未満)は10年間、地熱発電は15年間、事業用太陽光発電(10kW以上)・風力・水力・バイオマス発電は20年間、高い価格のまま買い取ることが決められています。
住宅用太陽光発電の買取保証期間は10年と定められています。2019年には10年を迎え、この価格が保証されなくなりました。固定価格買取制度(FIT)から卒業した発電設備を卒FITと呼びます。2019年以降、買取価格が終了した対象者に向けて電力会社各社が、さまざまなプランを発表しましたが、プランが発表されたのは2019年11月間近のことでした。つまり、買取期間の満了を迎える方が初めて出るギリギリの頃に発表され、2009年に太陽光発電を導入した卒FIT約35~40万世帯はどうすればいいのか不明瞭なままだったのです。この問題は「2019年問題」と呼ばれています。

卒FIT後の選択肢

FIT期間が終了しても、卒FIT電力として売電は可能です。
卒FITを迎えた住宅用太陽光発電設備を持つ一般家庭が取るべく選択肢は3つです。
①継続して同じ会社に電気を買い取ってもらう
②蓄電池や電気自動車等の設備を導入して太陽光発電電気を自家消費
③電気買取の会社を選びなおす

選択肢①継続して同じ会社に電気を買い取ってもらう

この選択肢におけるメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット
1.同じ会社と契約を交わすため手間がかからない
2.契約が自動契約になっている場合が多い
3.今までずっと取引をしていたという安心感

デメリット
1.買取価格がFIT期間よりも大幅に安くなってしまう

2009年当時の売電価格は48.00円/kWhと高額で買取を行っていました。しかし、現在の大手電力会社の余剰電力買取価格は7.15円~9円となっています。

電力会社余剰電力買取価格加入条件
北海道電力8円/kWh 
東北電力9円/kWh 
東京電力8.5円/kWh付帯サービス「再エネ企業応援プラン」が無料で利用できる。
北陸電力8円/kWh 
中部電力7.00~12.00円/kWh対象の電気プランへの加入が必須。

買取電力量に応じてAmazonギフト券や、WAONポイント2pt/kWhがもらえるプランもあり。

関西電力8円/kWh余剰電力を関西電力が預かり、自宅で使用した電気に充当される。

関西電力の電気料金プランへの加入が必須。

中国電力7.15円/kWhエネルギアポイント、電子マネーゆめか、WAONポイントなどの付与あり。

余剰電力を中国電力が預かり、自宅で使用した電気に充当されるプランもあり。

四国電力7円/kWh 
九州電力7円/kWh 
沖縄電力7.7円/kWh 

選択肢②蓄電池や電気自動車等の設備を導入して太陽光発電電気を自家消費

この選択肢におけるメリット、デメリットは以下の通りです。

メリット
1.電気事業者から購入する電気の量を少なくできるため、毎月の電気料金が安くなる
2.上手に利用すれば電気料金を0円にできるかもしれない
3.災害など非常時になっても蓄電池を導入しておけば非常用電源にもなる
4.国や自治体の補助金交付などがある
5.夜間に電気料金が安い時間に電気を買って蓄電池に貯めておくと、天候が悪くても電気を使うことができる

デメリット
1.設備が整っていないと初期費用で大きなコストと手間がかかる
2.設備導入のため、最適なモデルを選ぶためにはある程度の情報収集が必要
3.家庭用蓄電池や電気自動車などの設備メンテナンスが必要
4.設置スペースが必要になる
使い切れなかった電気を家庭用蓄電池や電気自動車(EV)などに貯めて、夜間電力や非常用電源、自動車の駆動力として消費する事を「自家消費」と言います。
自家消費におけるメリットは多いですが、その分デメリットも存在します。たとえば太陽光発電による電気を貯める家庭用蓄電池や電気自動車は、最低でも100万円の出費は覚悟しておくべきでしょう。
しかし、蓄電池の導入にかかる初期費用は年々低価格化しており、壁掛けタイプや屋内にも設置できるような小型・カスタマイズ可能な蓄電池も登場してきています。
それでも蓄電池はやはり高い買い物です。自宅の発電状況に適していないモデルを選んでしまうと大きな痛手になります。そのため、蓄電池を選ぶ際には以下のポイントを抑えておくのがいいでしょう。
・容量(蓄電池に蓄えておける電気の量)
・定格出力(蓄電した電気を一度に出力できる量)
・使用可能サイクル(充電・放電をできる回数、電池の寿命)
・サイズ(設置スペースがあるか)
・保証やメーカーのサポート

選択肢③電気買取の会社を選びなおす

この選択肢のメリット、デメリットは以下の通りです。

メリット
1.大手電力会社に比べて格段に高い価格で余剰電力を買い取ってくれる会社もある
2.契約条件によっては倍以上の買取価格になるケースもある
3.初期費用が不要
4.余剰電力を買い取ってもらうという意味ではFIT期間中と変わりがない
5.新電力と呼ばれる電気事業者であれば、すべての手続きをオンラインで済ませられる

デメリット
1.切り替えの手続きが必要

FIT期間中とは別の電気事業者を探し、電気を買い取ってもらう方法です。
電力自由化を機に新しく電力小売事業に参入した電力会社は、地域指定の電力会社と区別するために「新電力」と呼ばれています。
新電力は独自の価格やサービスで、卒FITの電力買い取りサービスを打ち出しています。同じ電力会社であっても、地域によって売電価格が異なる場合があるので、しっかりとチェックしましょう。
新しい電力会社を選ぶ際は事前に情報を集めること、その情報を調べ見極めること、電気料金については実際にシミュレーションしてみることが大切です。

ホームページの専用フォームから申し込む場合の手順は以下の通りです。
①お手元に検針票を用意し、HPで料金シミュレーションを行う
②ホームページのお申し込み専用フォームを開く
③必要事項を打ち込む
④送信

現在契約している地域指定の電力会社との契約を途中解約しても、違約金等のデメリットは発生しません。何故なら、電力会社乗り換えは国が決定した「電力自由化」に基づいており、乗り換えに際し消費者にデメリットが生じることはないからです。
地域指定の電力会社から新電力に乗り換えた後、短期間で他の新電力に乗り換える場合は違約金が発生する可能性があります。

条件で卒FITが高く売れるケース

ガスと卒FIT買取サービスのセット契約で買取単価が上がるケースがあります。
更にガス料金も、ガス会社の見直しで安くなるケースとそうでないケースがあります。
他にも卒FIT買い取りサービスが高くなる可能性がある契約条件は以下の通りです。

・蓄電池の購入・設置
・HEMSなど省エネ機器の購入・設置
・ガス機器の購入・設置
・特定ハウスメーカーで太陽光パネルを設置
・ポイントで追加還元を受けること

買取価格が高額であるほど契約条件の難易度が高いのです。新電力の買取価格の高さは魅力的ですが、条件を満たさないと適用されないのでご注意ください。

電力会社が卒FITを積極的に買い取ろうとする理由

太陽光発電による電気は再生可能エネルギーです。再エネ化、脱炭素化のニーズが世界的に高まっているため、卒FIT電力には環境価値があります。環境価値を持つ卒FIT電力を買い取る事によって、電力会社は再エネ電力メニューとして企業に売る事ができます。

一般家庭が環境価値を提供するメリットとリスクは以下の通りです。

メリット
・売電収入が入る
・企業からポイントが付与される(買取価格にプラスして1kWhあたり1円相当の電子マネーなど)

リスク
・買取サービスの終了や買取価格の変更を電力会社の都合で実施される
・FITと違って買取は電力会社にとって義務ではないから期間が約束されたものではない
・1年単位で変更される可能性もあるため、更新前に契約を見直さないと、損をしてしまう場合もある

卒FIT後「売電収入」と「自家消費」どっちがお得か

FIT期間中は申し込んだ時の価格のまま固定で電気を買い取ってもらっていました。しかし、卒FIT後は売電価格が一気に下がってしまいます。そうなると自家消費した方がいいのか、売電した方がいいのか、どっちがお得なのか。

たとえば以下のような条件の場合。
①1kWhあたり10円の卒FIT買い取りサービス
②1kWhあたり27円の電気料金プランを契約して4500kWhの電気を発電

この場合、以下のような結果になります。
①卒FIT太陽光発電の電気を売電→ 4万5000円の収入
②卒FIT太陽光発電の電気を自家消費 →12万1500円を節約

同じ量と質の電気なのに、売るか使うかで手元に残る金額に大きな差が生じます。自家消費すれば、7万円以上も節約できてしまうのです。
電気代は値上がり傾向が続いています。そのため、太陽光発電の電気は自家消費し、電力会社から購入する電気を極力減らすのが一番お得ではないでしょうか。
発電した電気を全て自家消費するのが難しい場合、蓄電池が有効手段になります。

まとめ

卒FITを迎えた住宅用太陽光と売電終了について解説してきました。以下、まとめになります。

・卒FITを迎えたからといって売電終了にはならない
・卒FIT後の選択肢は3つある
・卒FIT後は「余剰電力を売電」するより「自家消費」した方がお得

卒FIT後の選択肢は個人の自由です。しかし、年々上がっていく電気代や2009年当初よりも低い売電価格を考えると、全量自家消費に切り替える方が大変お得です。卒FIT後は太陽光発電で作った電力を全量自家消費させるか、もしくは新電力のお得なプランを利用して余剰電力を売電するのか。どっちが自宅にとってお得か、ぜひ一度使用電気量をシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。

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蓄電池コンシェルジュ代表
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