ハイブリッド型蓄電池にはない単機能型蓄電池の良さとは?4つのメリット・デメリット

大型台風が直撃すると、大規模停電が多発します。東日本大震災以降、停電時でも電力を確保することができる家庭用蓄電池は注目を浴び、ニーズは急速に高まっています。長期間の停電を体験した事がある人は、電気があるとないとでは雲泥の差である事は身に染みていると思います。住宅用の定置型蓄電池には【単機能型】【ハイブリッド型】の2つの種類があるのをご存じでしょうか。どちらを設置した場合でも通常時の使用には差はありませんが、ある一定の条件下では明確な違いが出てきます。そこで今回は、ハイブリット型と比較しながら単機能型蓄電池の特徴やメリット・デメリットについて解説していきます。

単機能型蓄電池とは

単機能型蓄電池とは、太陽光パネル用のパワーコンディショナ(パワコン)と蓄電池用パワコンが別々になっているものです。一方、太陽光発電と共通のパワコンを使うのがハイブリッド型蓄電池です。

単機能型蓄電池は太陽光発電を設置していなくても導入が可能な蓄電池です。災害時の非常用電源を確保したり、電気代を削減することができるため、蓄電池は導入したいが、太陽光発電の導入は考えていないという方にもおすすめです。

パワコンとは、発電した電力を家庭で使用できる電力に変換する仕組みになっています。その日の日射量や温度で変動する電圧と電流から、最大の発電量になる電圧と電流の組み合わせを見つけて、安定的により多くの電気を取り出せるように調整する働きをします。

蓄電池は直流電気です。しかし、太陽光パネルで発電した電気や電力会社から購入した電気は交流電気のため、直流電気に変換しなければ貯める事ができません。また私達が家庭で使っている電気も交流電気なので、蓄電池に貯蓄した電気を家庭で使うには直流から交流に変換しなければいけません。そのため、蓄電池にパワコンは必要不可欠となります。

既に太陽光発電システムを設置済みで、更に自家消費用に蓄電池を導入する場合、ハイブリッド型蓄電池にすると、太陽光発電用のパワコンを撤去しなければいけません。しかし単機能型蓄電池なら、蓄電池用のパワコンと蓄電池を一緒に導入するだけですので、太陽光発電用のパワコンをそのまま使用する事ができ、撤去代がかかりません。

単機能型蓄電池のメリット

単機能型蓄電池のメリットは4つです。
①導入費用が抑えられる
②使用家電の制限がない
③太陽光発電がなくても設置可能
④太陽光発電のメーカーを気にしなくていい

①導入費用が抑えられる

蓄電池用のパワコンを新たに取り付ける単機能型蓄電池は、ハイブリッド型に比べ役割が少ないため、kW辺りの単価が安くなっています。
ニチコンというメーカーで12kWhの蓄電池容量の場合、ハイブリッド型蓄電池は定価420万円なのに対し、単機能型蓄電池の定価は370万円と50万円の差額があります。
メーカーによって金額差はありますが、大体どの会社の蓄電池でも単機能型蓄電池の方が安くなります。また、ハイブリッド型は電気の変換を1回で済むのに対して、単機能型は3回行います。そのため、ハイブリッド型は電力ロスが6%に対し、単機能型は18%となります。しかしハイブリッド型と同じ金額の単機能型を購入した場合、容量が大きいので12%近くの変換のロスを大容量でカバーしていると言えるでしょう。

②使用家電の制限がない

特定負荷型か全負荷型かによって、停電時に使える家電の数が異なってきます。
特定負荷型は、停電が発生すると事前に選んでおいたコンセントにしか電力が配給されません。特定負荷型の場合、ほとんどの蓄電池は2~4回路が基本であり、全ての電化製品が使用できる電力が蓄電されていたとしても、使えるコンセントは2~4つまでしか使えないのです。

一方、全負荷型は、家全体を丸ごと包むように、全てのコンセントが使用可能です。停電時に普段と変わらない生活ができてとても良いのですが、蓄電池に貯められる電力は限られているため、長期間の停電を想定してどの電化製品を何分使うかあらかじめシミュレーションしておくといいでしょう。単機能型は全負荷型の取り扱いが多く、停電時にすべての電気を使用可能にしているので容量が大きく安心です。単機能型は主流が10kWh前後からとなっていますので、1日で使う電気の約3分の2から半分をまかなう事が可能です。

単機能型には200V出力に対応した製品も多く、エコキュートやリビングに設置してあるような大容量のエアコンも動かすことができ、小さいお子様や、高齢の方がいるご家庭にとって停電時も安心する事が出来ます。

この全負荷型を設置する場合、特定負荷型よりも価格が高くなってしまいます。しかし、総合して特定負荷型のハイブリッド型蓄電池を設置する場合とほとんど変わらない値段になるので、停電時に電気のあるいつも通りの生活を送りたい人は、単機能型蓄電池の全負荷型の方がお得と言えるでしょう。

③太陽光発電がなくても設置可能

単機能型蓄電池は太陽光発電なしでも運用できるので、瓦屋根に手を加えたくない、立地条件から太陽光発電を設置しても採算がとれない、住んでいる場所が市の景観条例地域など、そういった事に悩む必要はありません。また、太陽光発電を使わなくても、安価な深夜電力を蓄電池に溜めておき、日中や夜間に使用することができるので、節約にもつながります。

④太陽光発電のメーカーを気にしなくていい

単機能型蓄電池は蓄電池専用のパワコンを使用するので、共通のパワコンを使用するハイブリット型のように太陽光発電メーカーを気にする必要がありません。ハイブリット型が設置できなかった家庭でも、単機能蓄電池であれば設置可能です。

単機能型蓄電池のデメリット

単機能型蓄電池のデメリットは4つです。
①パワコンの設置場所が必要になる
②屋外設置によるリスク
③停電になると太陽光発電と連携が苦手
④放電制御機能がついていない場合がある

パワコンの設置場所が必要になる

単機能型蓄電池の場合、蓄電池用の新たなパワコンを設置する場所を用意しなければいけません。パワコンの大きさは一般的に縦が550mm、横が400mm、厚さが180mmであり、重さは20~30kgと重く、取り付け場所の強度も必須となります。そのため、壁掛けはオススメできません。
設置する場所はブレーカー付近にすると効率的と言われていますが一般家庭では少し難しい様に思えます。それ以外の場所に設置すると、パワコンとブレーカーをつなぐケーブルが長くなり、電力の変換ロスが更に大きくなってしまいます。

屋外設置によるリスク

単機能型蓄電池は容量や重力が大きいため、屋外設置が基本となっています。屋外設置の場合、雨風による影響は避けられず、メンテナンスの回数も多いものとなるでしょう。
水害による故障を避けるため、地面より20cm以上高さのある、転倒しないようしっかりとした基礎を作る必要があります。そのため、予想以上に設置費用がかかるかもしれません。
また、水害で停電が起こっても蓄電池が故障してしまい使えないという可能性も起こりえます。基礎をしっかり作り、その後のメンテナンスをこまめに行うようにしましょう。

停電になると太陽光発電と連携が苦手

単機能型蓄電池は太陽光発電で作った電気を、効率よく蓄電池に充電できない機種が多いです。普段使いの時は、ハイブリット型とほぼ同じ動きで、高入力で充電する事ができますが、停電時の自立運転になると話が違ってきます。

停電時に太陽光パネルで3kW発電できた場合、パワコンの自立運転が前提となるため最大1.5kWに圧縮されてしまいます。そのため、単機能型は停電時になると、この最大1.5kWの電気を分けることしかできなくなります。
もし冷蔵庫やテレビで電気を1kW使用したとすると、蓄電池には残り0.5kW前後しか残っていません。多くの単機能型蓄電池ではこのような動きとなりますが、伊藤忠商事のスマートスターL等、一部の機種はこのデメリットを回避している商品もあります。

放電制御機能がついていない場合がある

蓄電池はリチウムイオン電池ですので、特性として放電しきってしまうと充電できなくなり、耐久性にも悪影響を与えます。多くのハイブリッド型蓄電池の場合、初期設定で20%までしか放電できないようになっていますが、単機能型蓄電池の場合、この機能が搭載されていないものが多く、停電時に普段と変わらず電気を使っていたら放電しきっていたということもありますのでご注意ください。

単機能型蓄電池はこんな人にオススメ

単機能型蓄電池は以下のような人にオススメです。

・太陽光発電を設置していない人
・太陽光発電を設置して10年以上経過している人
・できるだけ費用を抑えて蓄電池を導入したい人

単機能型蓄電池はハイブリッド型に比べ、導入費用を安く抑える事ができます。太陽光発電を導入していなくても、深夜に安い電気を蓄電する事で節約する事も可能です。
また、太陽光発電用のパワコンを撤去せずにすむので、太陽光発電を設置して、自家消費用に蓄電池を導入したいという方にも単機能型蓄電池はオススメだと言えるでしょう。

単機能型蓄電池の中には、機種によってパワコンが内蔵しているものもありますので、スペースを広く取らなければいけないデメリットを解決する事ができます。代表的な蓄電池でいえば、「伊藤忠商事 スマートスターL」や「ニチコン ESS-U2M1」などが挙げられます。

単機能蓄電池は全負荷型対応なので、小さなお子様がいる家庭の場合、停電時にも電気のある普段に近い生活が送れるのでオススメと言えます。

単機能型蓄電池にもハイブリッド型蓄電池にも、それぞれ良さがあります。どちらを利用する場合でも、通常時にはそれほど差がありません。そのため、自分たちに必要な蓄電用量はいくらなのか、本当に全負荷型は必要なのかなどご家庭の使用目的に合ったものを選択してください。蓄電池は発売当初に比べ価格が安くなってはきていますが、それでも高い買い物です。価格や設置費用は販売店によって異なりますので、複数の業者から見積もりをとって比較し、その上で自分達に適している蓄電池を導入しましょう。

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蓄電池コンシェルジュ代表
根上 幸久

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