蓄電池とAhの関係とは? 4,800Ah・セル以上の蓄電池は消防法規制対象になる!

Ahとは、安定した1アンペア(A)の電流を1時間流すことで移動する電荷の量であり、完全充電後に電池がどれぐらい持続するかを表す単位です。4,800Ah・セル以上の蓄電池設置は消防法規制対象となります。今回は蓄電池とAhについて解説します。

Ah(アンペアアワー)とは

アンペアアワー(Ah)とは、使い始めから使い終えるまでにバッテリーから取り出し、放電した電気量のことです。
放電を止める電圧はバッテリーごとに決まっており、バッテリー容量は流した電流の大きさにより変わりますので、時間率と一緒に表記します。Ahはバッテリーの容量などを示す際によく使われます。
10Ah(1時間率):電流10Aを1時間流せる容量がある
10Ah(5時間率):電流2Aを5時間流せる容量がある

Ahの数字が大きいほど1回のフル充電での作業をたくさん行うことができます。
電気代の基本料金などはアンペアに応じて金額が決まっており、例えば40A契約の家庭なら同時に使用できる機器の合計消費電力が約4,000Wまでという意味になります。

HR

HR(hour rate)とは時間率のことです。バッテリーの説明の際にHRという単位が表記されているものもあります。
たとえば12V30Ah(5HR)という表記がされたバッテリーの場合、6A(1時間当たりの電流の値)の電流を5時間以上使い続けるとバッテリーが上がるレベルまでバッテリー性能が落ちることを表しています。

12V30Ah(5HR):6Aの電流を5時間使い続けられる
12V30Ah(20HR):1.5Aの電流を20時間使い続けられる

この2つのバッテリー容量は同じですが、同じ負荷をかけた場合、5時間率のバッテリーの方が長持ちします。なぜなら、バッテリーは短時間に大容量の電気を消費することが苦手だからです。そのため、5時間率でテストされたバッテリーの方が、厳しい条件をクリアして合格したことになります。

一般的な国産車に使用されているバッテリーの場合は5時間率、欧州車のバッテリーは20時間率が使われることが多いです。

AhとWhとV

蓄電池に関するそれぞれの値を換算する際の計算式は以下の通りです。

W=A×VA=W÷VWh=Ah×VAh=Wh÷V

W(ワット)は電気機器が消費する電力量を表します。暖房600Wなど各電気機器に記載される消費電力と時間を掛けることで「Wh」が算出できます。
たとえば、消費電力600Wの暖房を4時間使用した場合、2,400Wh(2.4kWh)の電力を消費したことになります。電気代はこの消費電力量(kWh)に応じて支払っています。
またAhに電圧(V)をかけると、Whが導きだせます。

V(ボルト)は電圧を表します。日本の通常家庭の電圧は100Vです。
市販の電球などで100V用と110V用の二種類をよく見かけると思います。110V用は工場地帯などに対応しています。電力を多く使う工場は、稼働していない時間帯などでその地域の系統の電圧を若干上げる場合があり、その際100V用の電球を使っていると、負荷が大きくなって電球の寿命を縮める可能性があるからです。

AhとWhの違い

バッテリーの性能を表す説明などの時にはAh、家庭で使う電気の電気料金明細を見るとWhの記載があります。どちらも電気のことを表していますが、2つが表しているものには違いがあります。

Ah(1時間あたりに流した電流量):電流の流れの大きさ(A)×電流を流した時間(h)
Wh(1時間あたりの電力の仕事量):消費電力(W)×電力を流した時間(h)

Ahは、一般的な乾電池や鉛蓄電池、モバイル機器バッテリーの容量を表す際に用いられます。電池の使用時間を求める場合、Ahを取り出したい電流の大きさ(A)で割る事によって求めることができます。
たとえば、12V30Ahのバッテリーの場合、1Aの電流なら30時間、10Aの電流なら3時間、30Aの電流ならば1時間使える容量があることになります。

Whは据え置き用リチウムイオン二次電池の容量を表す際に用いられます。電池の使用時間を求める場合、Whを使用する消費電力(W)で割る事によって求めることができます。
Whは電圧(V)×電流(A)×時間(h)でも求めることができます。たとえば12V30Ahのバッテリーの場合、360Whの仕事量ができます。そのため、60Wの電力ならば6時間、120Wなら3時間、360Wなら1時間使う事ができます。

ただし、フル充電しても8割程度までの蓄電しかできないことや、一定量の電力を使い切るとバッテリー上がりを起こしてしまいます。電池は放電を続けるにつれて電圧が低下してしまうので、電池内部に電力が残っていてもそれを押し出す力がなくなり、蓄電容量の分だけ放電を行えるわけではありませんのでご注意ください。表記されている容量は目安と考えるのがよいでしょう。

mAh

「mAh(ミリ・アンペア・アワー)」は、バッテリーの容量を示す単位で、「放電容量」とも呼ばれています。バッテリーの容量とは、バッテリーが100%の状態から0%になるまでに放出される電気量のことです。放出するということは、それだけの電気量を「蓄えられる」とも言い換えられます。

Aは電流を表す単位ですが、スマホなどに使われるバッテリーは容量が小さいため、1,000分の1の単位「m(ミリ)」が付いて「mA(ミリアンペア)」と表すのが一般的です。hは単位時間で、この場合は1時間を意味します。

つまり、mAhは「1時間に流せる電流」を表します。たとえば100mAhは、100mAの電流を1時間流せる容量ということになります。

2,500mA×1h=2,500mAh
1,250mA×2h=2,500mAh
5,000mA×0.5h=2,500mAh

mAhは、ある大きさの電流を流した時にバッテリーがどれだけ持続するかを表す単位であるといえます。mAhの数値が大きいほど、バッテリーの容量が多く、1時間あたりに流れる電流も大きいのです。

電圧が異なるバッテリーの換算方法

18V-5.0Ahバッテリーと 36V-2.5Ahバッテリーはどちらも容量は同じです。
バッテリー容量を表す単位はmAhですので、単位の大きい18V-5.0Ahバッテリーの方が容量は大きいと考えてしまいますが、「mAh」は「同じ電圧のバッテリー」の容量比較にしか使えない単位です。

電圧の違うバッテリー間で容量を比較する場合は、mAhではなくmWhで考える必要があります。

mWh(1時間あたりの電気の仕事量)=m×W(電力)×h(時間)=m×A(電流)×V(電圧)×h(時間)

mWhは、Ahに電圧(V)を掛けた単位です。
たとえば、18V-5,000mAhのバッテリーと36V-2,500mAhのバッテリーをmWhに変換すると90,000mWhになります。

5,000mAh×18V=90,000mWh
2,500mAh×36V=90,000mWh

バッテリーの容量を表しているmAhは、mWhを経由すればmAhに換算できます。

5,000mAhのスマホ:18,000mWh=5,000mAh×3.6V
18V、6,000mAhの工具バッテリー:108,000mWh=6,000mAh×18V

mWhを動作電圧で割るとその動作電圧でバッテリー容量がどれくらいになるか計算できます。

携帯電話のリチウムイオンバッテリーは3.6Vで動作しています。18V、6,000mAhのバッテリーを携帯電話に充電する場合以下のようになります。

30,000mAh=108,000mWh÷3.6V

18V、6,000Ahのバッテリーを3.6Vバッテリーとして換算すると、30,000mAhの容量を持つことがわかります。このように、一般的にはバッテリーの容量表記の単位にはmAhやAhが使われていますが、バッテリーの電圧が変わると一概に比較することが出来なくなるので注意しましょう。

4,800Ah・セル以上の蓄電池設置は消防法規制対象

スマートフォンのバッテリーなどに使われているリチウムイオン電池は蓄電池設備にも使われています。蓄電池設備は、消防法や火災予防条例によって規制される電気設備です。東日本大震災以降、災害などの長期停電などによる非常時電源として設置する家庭が増えつつあります。同一の場所にある蓄電池容量の合計が4,800Ah・セル以上になる場合、蓄電池設備が消防法によって規制されることになり、所轄消防に設置届を提出しなければいけません。

消防法とは、1948年に「火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資すること」を目的とした法律です。消防法に基づく蓄電池設備の規制により、電気的出火危険防止の観点から以下の規制がされています。

・屋外に設ける蓄電池設備の場合、雨水等の浸入防止の措置が講じられた鋼板で造られた外箱に収納されたキュービクル式のものとすること(火災予防条例 第13条 第3項)
・屋外に設ける蓄電池設備の場合、火災予防上支障がない構造を有するキュービクル式のものを除き、建築物から3m以上の距離を保つこと(火災予防条例 第11条 第2項)
・屋外に設ける蓄電池設備の場合、不燃材料で造った壁、床及び天井で区画され、かつ、窓及び出入口に防火戸を設ける室内に設けること(火災予防条例 第3条 第3項)

4,800Ah・セルは、セルの定格容量とセルの数を掛け合わせると算出できます。例えば1時間に200アンペアの電流を取り出すことのできる容量を持つセルの場合、24個直列に接続されていることになります。

200Ah×24セル=4,800Ah

リチウムイオン電池の公称電圧は3.7Vです。

Wh=V×Ah
3.7V×4,800Ah=17,760Wh=17.76kWh

日本の平均的な家庭の1日の消費電力は約10kWhですので、17.76kW未満でも余裕で1日の電力消費を補うことができます。そのため、一般家庭で使われている蓄電池のほとんどが規制の対象にならないといえます。
しかし、2世帯住宅で10kWhの蓄電池を2台設置したい場合、上記の消防法の規制対象となってしまいます。そうなると、厳しい規制を遵守したうえで設置し、詳しい内容を所轄消防署に問い合わせの上、「設置届書」を提出する必要がでてきます。そのため、一般家庭で4,800Ah・セル以上の蓄電池設置は現実的には大変難しいといえるでしょう。

まとめ

蓄電池とAhについて解説してきました。以下、まとめになります。

・Ahの数字が大きいほど1回のフル充電での作業をたくさん行うことができる
・Wh=V×Ahで求められる
・4,800Ah・セル以上の蓄電池設置は消防法規制対象であり、所轄消防に設置届を提出しなければいけない

Ahは使い始めから使い終えるまでにバッテリーから取り出し、放電した電気量であり、据え置き用の蓄電池だけでなく、スマートフォンのバッテリーなど様々な所で見ることができる単位です。計算によって使用時間や容量などの数値を求めることはできますが、フル充電しても8割程度までの蓄電しかできないなど、蓄電容量の分だけ放電を行えるわけではありません。表記されている容量は目安と考えるのがよいでしょう。

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蓄電池コンシェルジュ代表
根上 幸久

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